アカデミー賞、08年来最悪の視聴率

 米国の映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が毎年、最優秀映画作品や俳優などに授与する第88回アカデミー賞の発表と授賞式が228日、ロサンゼルスで開催された。同授賞式の模様は米メディア企業大手ウォルト・ディズニー傘下の地上波テレビABCネットワークが米東部時間午後8時半から3時間半余りにわたって全国向けに独占生中継。ニールセン社によれば、平均視聴者数は約3440万人と、昨年比8%減、2008年来最悪の記録となった。

 今年のアカデミー賞は、主演男優賞や主演女優賞など演技部門候補者 20人が2年連続で全員白人となったことで「人種差別的だ」などと物議を醸し、黒人俳優ウィル・スミスさんらが同受賞式をボイコットする動きが出ていた。

 当日は受賞式会場やニューヨークのABCネットワーク直営局前などで小規模な抗議デモが行われたが大きな混乱はなかった。視聴率のほうも、黒人視聴者数は前年比2%減と影響は最小限に留まった模様だ。ちなみに、黒人視聴者数が全体に占める割合は9.4%

 今年のアカデミー賞の司会者には黒人コメディアン、クリス・ロックさんが起用されたが(ボイコット騒動の前に決定されていた)、冒頭から授賞式全体を通して“ホワイト・アカデミー”に対し痛烈なブラックユーモアを展開、会場からは概ね大きな拍手が送られていた。

  ただ、視聴率が下がったとはいえ、NFL(米プロフットボール協会)試合の王者決定戦『スーパーボウル』に次ぐ高視聴率番組に変わりなく、番組中に流される30CMに約200万㌦の値が付いたという。総広告収入は事前番組「レッドカーペット」も含め、昨年比15%増となる約12000万㌦に達した模様。

 ところで、アカデミー賞最高の栄誉である作品賞には、カトリック教会のスキャンダル(神父らによる少年信者らへの性的虐待と隠ぺい)を暴いたボストン・グローブ紙特別取材班“スポットライト”を描いた『スポットライト 世紀のスクープ:邦題』が選ばれサプライズ受賞となった。

 主演男優賞は『レヴェナント 蘇りし者:邦題』の主役、レオナルド・ディカプリオさんが悲願のオスカーを獲得、会場はスタンディング・オベーションで祝福した。また、同作品のイニャリ トゥ監督は昨年の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せ ぬ奇跡):邦題』に続き2年連続で監督賞を獲得する快挙を成し遂げた。

 主演女優賞には、『ルーム』のブリー・ラーソンさん。核戦争勃発後、文明社会が破壊された世界の葛藤を描く『マッドマックス 怒りのデス・ロード:邦題』が美術、衣装など6部門でオスカーを獲得、最多勝に輝いた。

<テレビ朝日アメリカ 北清>