米調査会社eMarketer(イーマーケッター)はすでに米国におけるインターネット広告費がテレビ向け広告費を2017年に追い越すとの予測を出しているが、同社はこのほど、2020年には米テレビ広告費の総広告費に占める割合が三分の一弱に急減するとの見方を示し話題を呼んでいる。
同社によれば、17年のテレビ広告費は総広告費の35.8%に相当する720億1000万㌦。これに対し、インターネット(デジタル)広告は同38.4%となる773億7000万㌦と、初めてテレビ広告が首位の座を明け渡す見込み。
その後、テレビ広告のシェアは18年に34.8%となる738億1000万㌦、19年は33.7%752億9000万㌦、20年には32.9%の771億7000万㌦と初めて全体の三分の一以下になる。一方、インターネット広告費のシェアは、18年の40.8%866億1000万㌦、19年は43.1%961億1000万㌦、20年には44.9%の1052億1000万㌦に達するという。
今年のテレビ広告費は大統領選挙や連邦議会選挙向けの候補者による広告などに加えリオデジャネイロ五輪関連の広告出稿などがあり2.5%増の成長を見せるが、来年以降のテレビ広告費は年平均2%のプラス成長に留まる見込みだという。テレビ広告を尻目に活況を呈するのがネット広告ということになるが、同社上級アナリストマーチン・ウテレラス氏は、「(企業にとって)引き続き困難な経済状況が続く年であることから、広告予算の最適な振り分けを追及する広告主がデジタル広告に軸足を移すことになるだろう」と分析している。
今年のインターネット広告は、同社が昨夏に出した予報を大きく上回る15.4%増(前年比)となる688億2000万㌦に達する見込み。特にスマートフォンの普及が加速していることに伴い、モバイル広告が前年比38%増と急拡大、総額は436億㌦に達し、ネット広告の約4割を占める勢いを見せることになるという。ウテレラス氏は、「米消費者のモバイル・ディバイス利用が日常茶飯事となったいま、広告出稿にも大きな変化が生まれている。モバイル広告出稿急拡大が特筆される」と解説している。
他媒体の17年以降の広告費シェアを見ると、新聞が17年に6.6%、18年6.1%、19年5.7%、20年には5.5%にまで減少。雑誌は17年6.4%、18年6.1%、19年5.8%、20年5.6%とほぼ新聞なみの落ち込みを示し、活字媒体人気の急落ぶりを反映したものとなりそうだ。
一方、自動車王国を反映したラジオ広告も17年7.0%、18年6.7%、19年6.4%、20年6.1%と下降線を辿る。屋外広告のシェアは、17年3.8%、18年3.7%、19年3.5%、20年3.4%となっている。