米国で視聴率測定市場をほぼ独占する「ニールセン社」はこのほど、米衛星放送大手「ディッシュ・ネットワーク」から加入者の視聴データの提供を受ける業務提携契約を結んだと発表した。ディッシュは同社が映像配信サービス加入者に配る受信機、STB(セット・トップ・ボックス)を介して吸い上げることができる視聴者による番組視聴状況の詳細をニールセンに提供する。ニールセンが映像配信サービス(ペイテレビ)事業者のデータを融合するのは初めてのこと。過去数年にわたりペイテレビのSTBデータ入手を最重要課題の一つに掲げてきたニールセンにとってようやく努力が実った形だ。業界アリストの中には、ニールセンにとって画期的な動きとなった、などと好意的に評価する声も上がっている。契約は複数年にわたる模様だ。
ディッシュの契約世帯数は約1400万軒。ニールセンはディッシュのSTBデータを使って、現在提供しているローカル及び全国市場の視聴率調査をさらに精密なものにしたい考えだ。特に、ニールセンのサンプル世帯数が少ない小規模な市場の分析に役立つことが期待されているほか、視聴可能世帯数の少ないマイナーなケーブル局、さらには特定な視聴者グループがひいきにするニッチな番組(視聴者数1万人以下)についても詳細かつ精度の高い視聴状況などが明るみになることが期待されている。これらの視聴状況はニールセンの現行システムでは測定不可能とされている。
また、今回の提携には広告主側からも熱い視線が注がれている。細かな番組視聴状況が秒刻みで分かるため、どの番組でどのCMがよく視聴されているかなどCM効果を詳しく分析することができるようになるという。テレビ局などにとっては視聴習慣がより正確に掌握できるデータとなりそうだ。
これまでSTBから入手できる視聴状況データの扱いについて逡巡してきたペイテレビ事業者にとってはディッシュ・ニールセンの提携は、新しいビジネス展開の好機としてとらえる向きも出てきそうだ。
昨春、テレビ番組の動画配信状況など、デジタル市場の分析にあたる米調査会社大手コムスコアが別の調査会社レントラック社を買収したばかり。ネット上のテレビ番組視聴率の大局的な測定に手間取っているニールセンにとって強力なライバル出現となっていたが、今回の動きはそのコムスコアに対する対抗措置の一環という見方も出ている。