ニューヨーク市近郊にサービスエリアを抱える米CATV事業者大手Cablevision(ケーブルビジョン)はこのほど、動画配信大手Hulu(フールー)を同社が提供するペイテレビ・サービスで地上波テレビ局やケーブル局のラインアップに並べて配信すると発表した。チャンネル番号は605に設定された。これまでフールー加入者は、主にパソコンをはじめ、スマートフォンやタブレット型情報端末を使ってインターネットに接続しフールーが配信するテレビ番組や映画などをテレビ受像機以外で視聴してきた。しかし、同サービスを使えば、ネット接続がなくてもテレビを使ってフールーを楽しむことができるようになる。
ケーブルビジョンのペイテレビ加入者はフールーのサービスを他チャンネルと同様に選んでオンデマンド視聴することができる。同社のテレビガイド画面にも組み込まれ、視聴者にとってはあたかもプレミアム・チャンネルHBOやShowtime(ショータイム)をリモコンで選んで視聴するような体験ができる。ちなみに、ペイテレビとは、CATV、衛星放送、電話会社が提供する映像配信サービス。地上波テレビの再送信とケーブル局の配信に加え、プレミアム・チャンネルやペイ・パー・ビューなどを有料で提供している。
動画配信大手Netflix(ネットフリックス)はすでに過去数年にわたり小規模なCATV事業者との間にサービスを直接提供する提携を結んでいるが、STBメーカーTiVO(ティボ)をテレビに接続することが条件。ペイテレビ事業者が自社STBに動画配信サービスを融合するのは初めてのケースだ。
フールーにとって、スマホなどデジタル・ディバイスで番組を見ることに不慣れな熟年層などにテレビを通してフールーに親しんでもらいたいとの思惑がある一方、ケーブルビジョン側は、人気動画配信サービスをテレビ・チャンネル群に組み入れることで、さらなる解約傾向(コードカッティング)にくさびを打ち込みたい狙いがあるようだ。
米ペイテレビ事業者の間には、若者層の間に顕著となっているコードカッティングに対抗するために、米衛星放送最大手ディレクTVの「ディレクTV Now」やディッシュ・ネットワークの「スリングTV」、さらにはCATV最大手コムキャストの「ストリーム」など、インターネットを介した番組配信サービスを立ち上げる社が目立ち始めているが、ケーブルビジョンの新サービスはCATV事業継続のための新しい対応策とも言えそうだ。