21世紀FOX、ケーブル局パワーで大幅増収

 地上波テレビCBSネットワークや人気ニュース専門局などを傘下に置く米メディア企業大手21世紀フォックスがこのほど発表した201613月期決算は、主にケーブル局グループが大きく貢献し、前年同期比5.7%増となる723000万㌦の売上高を計上した。市場の予想を上回る結果だった。純利益は前年同期に売却したヨーロッパの衛星放送事業に見合う特殊要因がなかったことなどから13.7%減となる84100万㌦となった。

 部門別でみると、絶好調だったのがケーブル・ネットワーク・プログラミング部門。好調な視聴率を盾にペイテレビ・サービス(CATV、衛星放送、電話会社が提供する映像配信サービス)から徴収する配信料の値上げに成功。同収入は前年同期比10%増となった。ケーブル局の中でも特に健闘したのがニュース専門局「FOXニュース・チャンネル(FNC)」。例年になく関心が高い米大統領選挙を背景に記録的な視聴率を獲得、週によっては、ニュース専門局の枠をこえてケーブル局全体のナンバーワン・チャンネルになることも珍しくない状況だ。

 FNC以外にも同社が展開する地域向けスポーツ・チャンネルが好調だった。特に米プロバスケットボール協会(NBA)主催の試合中継番組が高視聴率を記録したことも大きく貢献した。同部門の売上高は9.8%394000万㌦に達した。

 同部門の次に光ったのが地上波テレビFOXネットワークが中核事業のテレビジョン部門。スポーツ物件の高額放映権料などが負担になったが、高視聴率にともなう広告収入アップやペイテレビから徴収する再送信料が寄与し、売上高は前年同期比5%増の13億㌦となった。

 唯一元気のなかったのが映画会社を中心とするフィルムド・エンターテイメント部門。売上高は前年同期比2.8%の減少となる232000万㌦だった。番組販売などが低調だったが、これまで二ケタ台の減収を続けていた状況からは脱したことから、経営陣は先行きは明るいとしている。

 一方、決算報告の中で注目を集めたのが、「長期的に見ればすべてのビデオ・コンテンツがネット上で視聴される時代が来るだろう。その時代の到来は早いペースで訪れるかもしれない」などとするジェイムス・マードックCEOの発言。放送事業者の将来はデジタル配信にあるとの考えを示唆したものだが、今後は同社が共同出資する動画配信サービスHulu(フールー)などにより積極的に取り組んでいく模様だ。

 

<テレビ朝日アメリカ 北清>