米動画配信サービス大手Hulu(フールー)はこのほど、限定された地上波テレビ局やケーブル局をネット上で再送信・配信する“スキニー・バンドル”サービスを2017年初頭を目標に立ち上げる構想を発表した。新サービス構想をいち早く報道したウォールストリート・ジャーナル紙によれば、フールーはすでに親会社であるウォルト・ディズニー、21世紀フォックス、NBCユニバーサルとの間で番組などの提供について協議を始めたようだ。
新サービス名や内容などの詳細は現時点では一切公表されていないが、ローカル局やケーブル局のサイマル配信とともに、フールーが現在提供しているオンデマンド・サービスにもアクセスが可能となる模様。経済・金融情報サービス「ブルームバーグ」などは月額加入料が40㌦ほどに設定されるとの見通しを示している。
米国ではCATVや衛星放送事業者さらには電話会社が提供する映像配信サービス(ペイテレビ)に加入しテレビを見ている人が9割近くいるが、毎年値上がり傾向が続く加入料に嫌気がさしたた加入者の間で解約傾向が顕著になっている。いわゆるコードカッティングという現象だが、解約しないまでも「見たくもないチャンネル数が多すぎる。普段見たいチャンネルに絞って料金も値下げしてほしい」と、スキニー・バンドルを求める声が急増しているのが現状だ。フールーはこうした声を背景に若者を中心としたコードカッターや若者以外にも広がりを見せているスキニー・バンドル派を取り込みたい考えだ。
金融機関大手クレディ・スイスのアナリスト、オマール・シーク氏は、新サービスが1000-2000万人の加入者を魅了することができると予測、フールーの企業価値をこれまでの150億㌦から一挙に250億㌦に引き上げた。
ただ、新サービスが人気を呼び同様なサービスが多出すれば、ペイテレビ事業者からの配信・再送信料が重要な放送外収入になっている米メディア企業(フールーの親会社を含む)が窮地に陥ることになるなど、マイナス効果を懸念する声も上がっている。
ちなみに、フールーでは現在、パソコンからのみアクセスできる広告支援型の無料サービス、CM挿入が限定されている月額7.99㌦のサービス、そしてCM無しの新サービスを11.99㌦で提供している。今年5月における加入者数は約1200万人。ネットフリックス、アマゾン・インスタント・ビデオに次ぎ動画配信サービス第3位。