動画配信サービスが飽和状態に

 米国ではネットフリックスが米国内会員数4600万人を超えるなど動画配信サービスを介した番組視聴が活況を呈している。しかし、そのオンライン・ビデオ市場が飽和状態に近づいているとする報告が出た。米調査会社「Strategy Analytics(ストラテジー・アナリティックス)」によれば向こう5年間にオンライン・ビデオ・サービスの成長率は8%以下に鈍り、事実上飽和状態に到達するという。

 ストラテジー社は、2016年におけるオンライン・ビデオ・サービスの売上高が前年比22%増(119000万㌦)となる662000万㌦に達するとみているが、15年に記録した前々年比上げ幅121000万㌦から減少することに注目、「(16年の)下げ幅は小さいが、減少傾向を示していること自体が極めて重要な点だ。加入型の動画配信サービスの普及率が確実に鈍っていくことを示している」と分析している。今後は、はけ口を海外市場に求めざるを得ない状況になるという。

 

 ちなみに、現在米国ではブロードバンド(大容量通信)インターネット通信サービス加入者の60%が何等かの有料動画配信サービスに加入しているがストラテジーでは加入率が85%に達した時点で飽和状態になるとみている。

 同社はその背景に、既存メディアの積極的な動画配信サービス参入を一要因として挙げている。有料チャンネルの雄HBOやショータイム、さらには地上波テレビネットワークなどがこぞってネット上の番組配信サービスを展開し始めており、広告主がターゲットにしているミレニアル世代(1834歳層)ではオンライン・ビデオ視聴がテレビで放送されるプライムタイム番組の視聴数をすでに超えた(インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー:IAB社)とする報告も出ている。

 着実に拡大している“テレビ離れ”に対応しようとネット配信サービスに進出し始めている既存メディアにとって、ストラテジーが出した報告は気になるところだが、テレビ視聴が当面は絶対的な人気を誇っていくという報告もある。メディア経営者にとってオンライン・ビデオ・サービスへのデリケートな取り組みが求められているとも言えそうだ。  

 米調査会社イーマーケッターによれば、米市民が今年、テレビ視聴に費やす時間は一日当たり4時間5分と昨年比2.1%の減少を見せながらも、オンライン・ビデオ視聴の1時間8分を圧倒している。だが、18年にはテレビ視聴が3時間55分に減少するという。

 

<テレビ朝日アメリカ 北清>