【視聴率のトップ7――五輪は強し!】

リオ五輪のテレビ視聴数と視聴率が前回のロンドン大会に比べて減少していることが引き続き話題となっている。開幕から10日間の平均視聴数は約2800万で、ロンドン大会から17%下落している(”Los Angeles Times” 8月17日付)。ことに、18歳から34歳のミレニアル世代のテレビ視聴数は30%ダウンしていると言う(”Wall Street Journal” 他)。ここにはミレニアル世代の視聴習慣の変化が顕著に表れていると言えるだろう。
そうは言っても、他局と比べた視聴数の優位は圧倒的で、8月8日から14日までの週のプライムタイム視聴数ベストテンのうち、7位までをNBCの毎晩のオリンピック中継が占めている。視聴数トップは、体操女子団体と競泳男子リレーで米国チームが金メダルをとった8月9日(火)の3340万視聴だ。

第7位となった12日(金)でもNBCの五輪番組は2400万視聴を記録しているのに対し、8位との伝統ある”60 Minutes”(CBS)はわずか600万視聴と、四分の一にとどまっている。平均視聴数もNBCの2820万に対して、CBS 360万、ABC270万とヒトケタ違うほどでABC、CBS、FOXを束にしてもNBCの五輪放送にはかなわない。これにひきずられて、いつもは熾烈な競争を繰り広げている夜のニュース番組もNBCの”Nightly News”がトップを走るなど、絶大な五輪効果を見せつけている(”TV News Check” 8月16日付)。
さらに、米国内の五輪番組の広告費の売り上げも、放送、ケーブル、デジタルを合計して12億ドル(約1200億円)に達している。これはロンドン大会に比して20%の増収で、ことにデジタルでの売り上げはロンドン大会を30%も上回っている。自動車、飲料、通信、保険、薬品が好調だという(”Adweek”,”Advertisingage”他)。NBCSportsのマーク・ラザラス会長はリオ大会を「史上最も経済的に成功した」大会だと公言してはばからないほどだ。

前回のレポートでは、ことに若い視聴者から「開会式の中継でCMが多すぎる」というクレームが殺到したことを伝えたが、NBCには、五輪競技の中継番組についても「CMが多すぎる」という苦情が多く寄せられているという。しかし、今回のリオ五輪番組(プライムタイム)でのCMは60分当たり平均15分37秒とロンドン大会と変化なく、むしろ通常枠よりも若干少ないほどだという(通常は16分から17分、”Broadcasting & Cable”8月16日付)。ここにも若い世代の視聴方法と視聴意識の変化が表れていると見られ、NBC自身の調査によれば、リオ五輪の最初の3日間を見た調査対象視聴者の80%がスマートフォンなどのセカンドスクリーンを利用した、と回答していて、これは二年前のソチ冬季五輪の時よりも61%も増えているということだ。NBCはNBCOlympics.comを立ち上げた他、SnapchatやBuzzFeedなどのsocial platformとも部分的なAd-sharingの契約を結んでいて、今後も視聴習慣の変化を敏感に取り込んで、積極的な協業を展開していく、としている。