【五輪の総括――Streamingへの道】

NBCが独占放送したリオデジャネイロ五輪は、視聴率競争では2週間連続、トップ10のうちトップ7を占めるなど、他のネットワークを寄せ付けない「一人勝ち」だったが、米国内ではメディアによる総括が盛んに行われ、紙面をにぎわしている。
22日にはNBCSports Groupから「NBCのリオ五輪は史上最も成功したメディアイベントである」と題する公式のプレスリリースが出たので、全貌が知りたい方は、http://nbcsportsgrouppressbox.com/2016/08/22/nbcs-rio-olympics-is-the-most-successful-media-event-in-history/ 
へアクセスを(英文)。
開会式、閉会式を含めた五輪期間プライムタイムのNBCのテレビ平均視聴数は2448万(ロンドン五輪は3030万)で、平均視聴率は14.8%(ロンドン五輪は17.5%)と、視聴数、視聴率では2012年のロンドンより減少する結果となった。

しかしNBCの五輪広告収入12億ドル(約1200億円、ローカル売り上げは除く)は史上最高で、その75%は、すでに大会開催前に売れており、全体の10%がstreamingからの広告収入となっている。仕組みとしてはTVに出稿したアドバタイザーだけがデジタルAdへの出稿も可能とし、アドバタイザーは、15秒か30秒のスポットを選択できる。コマーシャルの数はTVでもstreamingでもほぼ同数だが、TVとstreamingでは、そのCM内容を別のものに差し替えることが可能だ。NBCは、インターネット広告には、若年視聴者が多いことを理由にプラス50%までの割増料金を設定した。また、2100万世帯視聴を視聴率保証として、それを下回った場合のfree commercial time を五輪期間中に設定していた、ということだ。
確かにリオ五輪の「18歳から49歳」のテレビ視聴数は、ロンドン大会に比べて26%も減少し、視聴者の平均年齢は50歳に達していて、視聴者の高齢化は否定できない(AP通信)。

一方、NBCSports.comやNBCOlympics.comなどのlive streamingでの視聴は、毎日50万を超え、視聴年齢層は18歳から34歳のミレニアル世代が大多数を占めることから、NBCは今後のスポーツイベントでも、live streamingへのシフトを表明している。しかし、それでも五輪を見た人の9割以上がTV視聴に頼っていたことになり、五輪でのテレビの位置づけは依然として大きい。
むしろ、米国内のメディアが懸念しているのは、冬季大会を含むつぎの三つの五輪が、アメリカと昼夜が逆転する東アジアで開かれることだ。若年層がlive eventへの強いこだわりを持てば持つほど、そして、NBCのlive streamingへの注力が増せばますほど、liveとしての五輪を、その環境の中でどう活かしていくのか、徹底的な戦略の練り直しが必要とされている。
(ここでの数字は主に8月21日付”New York Times”「リオからの教訓――ライブイベントはStreamingにジャンプ」と、8月19日の”Bloomberg”によった)