【Twitter大統領トランプ――取材方法の大混乱!?】

ドナルド・トランプ次期大統領がホワイトハウスに入るまで50日を切った。そのホワイトハウスの記者証を持つ者は、内外の記者約750人。その中でも、ブリーフィングルームに入れる者は49人だ。AP、ABC、NBC、CBS、CNN、Fox Newsのホワイトハウス・プレス記者が最前列に座り。そのすぐ右後ろに座るのがThe Wall Street Journal、The New York Times、The Washington Postなどの記者――このアメリカの伝統的なメディアの根っこそのものが大きく揺らいでいる。
まず、トランプ氏は、7月以来、記者会見を一度も開いていない。当選後の勝利会見もなかった。テレビ・新聞を遠ざけるそのスタイルは選挙中と変わらず、当選後、家族と食事に出かける際にはホワイトハウス・プレス団に一言も告げず、プレス団は猛抗議したが、何の対応も見られなかった。
では主な発信場所はどこか。140字Twitterでの一方的な発言だ。その回数は当選後24日間で96回、そのフォロワーは1650万人に上る。

大統領(次期大統領)の発言を最初にキャッチし、分析して報道するというホワイトハウス・プレス団の特権的な役割が機能せず、Tweetフォロワー1650万分の1と同じ立場になっている。
Tweetの内容も、当初は、反トランプデモを「メディアにそそのかされたプロの抗議デモだ」とつい本音を漏らしたことと、天敵である「ニューヨークタイムズ」を執拗に批判した以外は、「次期大統領」を意識したおとなしい内容だった。〈I will be interviewed on @60Minutes tonight after the NFL game - 7:00 P.M. Enjoy!〉(今夜フットボールの後、午後7時から〈60ミニュッツ〉でインタビューやるよ。見てね!――11月13日のツイート)や〈I am the only one who knows who the finalists are!〉(閣僚のファイナリストは誰か、俺だけが知っている。――11月15日のツイート)と、いかにもテレビのリアリティ・ショー出身のノリが話題となるくらいだった。

ところが、11月19日に、ブロードウェイ・ミュージカル『ハミルトン』の俳優がペンス次期副大統領にアメリカの多様性を守るよう訴えたことに抗議するツイートを発信した頃から、選挙戦最中のようにTweetでの発言が過激になり、数も増えた。
そして11月21日には唐突に、政権移行後の100日プランを語る映像を、23日にはサンクスギヴィングのメッセージをTwitterにアップした。27日には「不正な投票を差し引けば、俺たちが得票数でも勝っていた」、29日には、キューバとの関係見直しを示唆するなど、いまやTwitterが声明発表や政策、人事発表の場となっている。
こうしてメディアを避けるトランプ氏に対して、メディア側の対応は後手後手だ。11月19日には、ネットワーク各局のアンカーマンと経営幹部が、オフレコを条件にトランプ・タワーに呼ばれ、トランプ氏との会合をもった。ところが、その会合の内容を大衆紙The New York Postがスッパ抜き、既成大手メディアの「オフレコ容認」を揶揄した。トランプ側からのリークがあったようだ。

これに対して、同じくトランプ側からオフレコ会談の申し入れがあったThe New York Timesはオフレコを拒否、結局トランプ側が折れて、22日にはThe New York Timesの経営、編集幹部、論説、コラムニストがトランプ次期大統領と会談し、The New York Timesは会談の現場から、やりとりを刻々とTweetした。これは翌日、紙面にもそのまま掲載された。
既存の大手メディアでは、トランプ氏のTweetを巡って、Tweetを記事にすべきかどうかという議論もあった。トランプは話題になる小ネタを効果的にTweetすることで、重要な問題から注意をそらそうとしているのだから、Tweetをニュースとして扱うべきではない、あるいは無視すべきだという声がある一方、記者会見だろうがTwitterだろうが、次期政権の最高権力者として、その発言を伝え、チェックするのは当然だ、という声もあった。しかし、人事や政策まで自分のTwitterを通して発表する現状では、Tweetはもはや公式広報以外の何物でもない。

さらに、トランプ氏がしたたかなのは、そのTweetを発するタイミングだ。物議を醸すTweetのほとんどが、午前3時から午前7時の間に発信されているのだ。たとえば、「何人といえどもアメリカの国旗を燃やすことは許されない。そうするのなら、市民権の剥奪あるいは刑務所行きという、しかるべき報いがあるべきだ」という唐突なTweetは、11月29日午前3時55分、キューバとの関係断絶の脅しは午前6時2分、ミュージカル俳優への抗議は午前5時48分に投稿されている。
 これはあきらかに、テレビ各局の朝の情報番組やニュースショー、それにインターネット事業に軸足を移し、アクセス数やPVの獲得が最大の課題となっている各新聞を狙ったものだ。トランプネタ、ましてや本人が発した最新の「お騒がせ」ネタは、アメリカのテレビにとっては格好の素材だ。
過激な発言を繰り返すことでニュースに取り上げられ、選挙戦を戦ってきたトランプ次期大統領のスタイルはいまだに健在であるばかりではなく、メディアの弱みも強みも知り尽くしているしたたかなmanipulator(情報工さらに、トランプ氏がしたたかなのは、そのTweetを発するタイミングだ。物議を醸すTweetのほとんどが、午前3時から午前7時の間に発信されているのだ。たとえば、「何人といえどもアメリカの国旗を燃やすことは許されない。そうするのなら、市民権の剥奪あるいは刑務所行きという、しかるべき報いがあるべきだ」という唐突なTweetは、11月29日午前3時55分、キューバとの関係断絶の脅しは午前6時2分、ミュージカル俳優への抗議は午前5時48分に投稿されている。
 これはあきらかに、テレビ各局の朝の情報番組やニュースショー、それにインターネット事業に軸足を移し、アクセス数やPVの獲得が最大の課題となっている各新聞を狙ったものだ。トランプネタ、ましてや本人が発した最新の「お騒がせ」ネタは、アメリカのテレビにとっては格好の素材だ。

 

過激な発言を繰り返すことでニュースに取り上げられ、選挙戦を戦ってきたトランプ次期大統領のスタイルはいまだに健在であるばかりではなく、メディアの弱みも強みも知り尽くしているしたたかなmanipulator(情報工作者)の顔が見えてくる。