1月20日は米国第45代トランプ大統領の就任式だが、就任式をめぐるメディアの状況は次回に譲るとして、今回は間近に迫った全米スポーツイベントの頂点、NFL(米プロフットボール・リーグ)主催の第51回スーパーボウルの動きについて報告する。
昨年のスーパーボウルはCBSが放送し、1億1190万の視聴数を獲得した。米東部時間午後6時半からの全国向け生中継の平均視聴率は49%で、スーパーボウル史上2番目の高さで、「重要視聴者層」(18歳から49歳)の視聴率も34.1%と広告主の期待に応えるものだった。30秒スポットCMの平均的な料金は480万ドル(約5億5200万円)で、500万ドル(約5億7500万円)を超えた枠もあったと言われており、1秒当たりの広告料は16万6千ドル(約1900万円)になる。試合の前後を含めるとスーパーボウル全体で4億4500万ドル(約511億7000万円)の収入を上げた。
今年のスーパーボウルは2月5日、テキサス州ヒューストンのNRGスタジアムで開催される予定で、放送権はFOXが握っている。
今年の売りは、70カメを使った立体的な中継と、360度Replayによる「プレーヤーの目で見たゲーム」を再現することだ。
もうひとつの注目点は、TV放送での30秒スポットの500万ドル超えが確実なことに加え、FOXがデジタル広告に力を注いでいることだ。去年のCBSのlive
streamingの視聴数は396万と、地上波視聴数の3.5%にとどまったが、FOXはFOXSportsGo.comで無料視聴を提供するとしており、その他、iOS、Android、Windows、Amazonタブレット経由でも視聴可能で、Amazon Fire TV やXbox Oneでも観戦できるようにする。こうして多様なdeviceでのデジタル視聴を可能にすることでlive
streamingの視聴数を増やし、広告効果を高めようという狙いだ。多くのアドバタイザーはテレビとデジタルの広告枠をセットで購入するようだが、デジタルのみのCM枠も用意されている。
そして今回FOXはこのデジタル広告のローカル枠を、初めてネットワーク加盟局(affiliate)に開放した。
FOXの加盟局は全米で170局を超えるが、日本のネットワークとは異なり、独立したメディア企業が複数の加盟局を束ねている。たとえばFOXの170の加盟局のうち22局はNexstar Broadcasting Groupというメディア企業の経営傘下にある。これまで、地上波での広告枠は中継権を持つネットワークがほとんど独占していたため、このデジタル広告枠の開放は、加盟局にとっては画期的な試みであり、ローカル加盟局のブランド力の向上と広告収入の増大に役立つとして歓迎されている。ロイター通信(1月12日付)によればデジタルCMのみの30秒スポットは70万ドル(約8050万円)と推定されているが、ローカルCMの料金については明らかにされていない。去年のスーパーボウルではキックオフからファイナル・ホイッスルまでの間のCM放送は合計49分35秒で、2015年の48分05秒から1分30秒増加しており、視聴率や視聴数だけでなく、CMの総時間にも大きな注目が集まっている。