CNNをめぐって、このところ、アメリカのメディアでは様々な憶測が飛び交っている。
まず11月8日、通信大手AT&Tのタイム・ワーナー買収案件(854億ドル≒9兆5648億円)をめぐって、反トラスト法(独占禁止法)に抵触する恐れがあるという観点から、米国司法省が、タイム・ワーナーの所有するCNN売却を巨大買収成立の条件とした、という報道が流れた。司法省はCNNか衛星放送最大手DirecTVの売却を求めた、とも報道(”The Washington Post”, 11月9日付他)されている。
米国では同一企業がふたつの放送ネットワークを所有することは禁じられているが、2012年に米国通信最大手Comcastがメディア総合企業NBCUniversalを買収した際には、反トラスト法抵触については問題にもされなかったことから、今回の司法省の動きは、トランプ大統領に厳しい批判を続け、政権と対立するCNNへの政治的な圧力ではないか、と取りざたされている。トランプ大統領は選挙戦の時から「自分が大統領になったら、AT&Tのタイム・ワーナー買収はブロックする」と明確に語っていたからだ。
その数日後、今度はロイター通信が、FOXの親会社21世紀FOXのルパート・マードック会長(86)が、今年5月16日と8月8日にAT&Tのランドル・スティヴンソン会長兼CEOに直接電話をかけ、CNN売却をもちかけた、と報じた。スティヴンソンAT&T会長は二度とも「売るつもりはない」と答えた、という(Reuter, 11月11日付)。
マードック会長は2014年にもCNN買収を持ちかけたことがあったが、タイム・ワーナー側が拒否している。
NetflixやAmazon、Google、Facebookがいずれも動画配信のオリジナルコンテンツ制作に積極的に乗り出し、スキニーバンドルによるケーブルTVの将来性への不安が語られる中で、トップの視聴率を誇るFOXによる24時間ニュース報道の老舗のCNNの買収話は、それだけで興味を掻き立てているが、トランプ政権を徹頭徹尾支持するFOX Newsと、トランプ批判の急先鋒に立つCNNの話なだけに、大きな注目を呼んでいる。