米国の通信・TV各局、海外TV局を貪欲に買収

 米国内のTV、通信、インターネット事業では、日本円にして数千億規模の企業買収は珍しくない。トランプ政権を巻き込んだAT&TとTime Warnerの、約9兆円を超える買収話は、すでに一年越しの話題となっているし、21世紀FOXのもつケーブルTV、National GeographicとFX、さらにFOXの映画スタジオなどを、Disneyが600億ドル(約6兆6600億円)で買収する交渉も妥結に近いのではないか、などという情報が飛び交っている。

 しかし、米国内の買収だけでなく、ここ数年活発なのが米国TV各局による、海外のTV局の買収だ。

 今年2017年11月には三大ネットの一角CBS Corp.がオーストラリアで三番目に大きい商業チャンネルNetwork Tenを3100万ドル(約34億4千万円)で買収した。

 2014年には大手通信会社Viacomが英国のChannl5を7億2500万ドル(約804億円)で、その翌年にはアルゼンチンの視聴者の3分の1をカバーするTelefeを3億4500万ドル(約382億円)で相次いで買収している。

 またDiscovery ChannelなどのケーブルTVを保有するDiscovery Communicationsは、2015年1月にフランスのTF1を5億3400万ドル(約592億円)で買収した。これは、TF1が株を持っていた欧州の人気スポーツ局Eurosportの経営権を握るための買収で、その後、Eurosportの全株を取得して、Eurosportが持っていた、2018年から2024年までの、ほぼ全欧州をカバーする五輪の独占放送権を獲得している。

 米国の通信、TV各社が海外TV局の買収を進めている理由は、米国内のTV広告マーケットの飽和状態がある。今後さらに鈍化すると予想される米国市場より、現有の潤沢な資金を背景に、TV広告マーケットの伸びが今後も期待できる海外のマーケットへと打って出ているわけだ。

 そして、もうひとつの理由は、国境を越えてインターネット動画配信を展開し、広告収入でも、オリジナル・コンテンツの質でもTVを猛追するNetflixやAmazon、Huluなどに対抗するために、市場規模の拡大と、自社コンテンツのOTT配信の規模拡大が急務となっているためで、米国通信・TV各社の海外TV局の戦略的買収は、さらに活発になりそうだ。