「スポーツ白書」――テレビとOTTの苛烈な戦い

 

 4大ネットワークのNBCを傘下に置く通信大手Comcastの調査部門Comcast Technology Solutionが「スポーツ白書」をまとめた。『テレビの将来のイチニアチブ――スポーツはOTTの新たな戦場』と題された白書は、テレビとデジタル動画配信OTTの間でのスポーツ・イベントをめぐる苛烈な戦いを勝ちぬくための条件を掲げている。この白書で書かれている内容は、五輪の放送権を独占し、マルチ展開して利益を上げているNBCのスポーツ戦略そのものと言っていい。

 白書は次の言葉で始まる。「われわれは今やTVと動画空間での新たな革命に直面している。そしてまたしても、スポーツ・コンテンツこそがその中心だ。新しいテクノロジーと変化する視聴習慣が、動画コンテンツの制作、配信、視聴方法のシフトチェンジを引き起こしている。従来型のTVと新興インターネット企業にとって、あらたな戦場が現れた。ここで勝利するのは、スポーツ・コンテンツを多く獲得し、配信し、新たな世代のファンにその価値を納得させられる企業のみだ。」

 ライブスポーツ・コンテンツは、Google、Amazon、FacebookなどのOTTにとっても最大の魅力となっており、潤沢な資金を背景に、こうしたインターネットの大企業は配信権を買い漁り、動画配信ネットワークを構築して数百万、場合によっては数十億人に同時配信する能力を備えた。また、若いスポーツファンの世代は、自分たちの応援するチームや選手とのsocial interactionやファン同士のつながりを同時に求めている――こうした状況でスポーツ・コンテンツをどう扱うかが白書のテーマだ。もちろんここでは、従来型のTV放送だけに頼るのではなく、OTTとの連携によって、より豊かなコンテンツをどう制作し届けるかが主眼だ。

 まずスポーツ・コンテンツの有利な展開に必要な項目を四つにまとめている。

1) ファンはますます国際的だ――グローバルに考えろ

2) ファンがライブに求めるものは高いクオリティだ

3) 権料が高騰する中、マネタイズ戦略を進化させよ

4) ショートフォームのソーシャル・コンテンツを工夫せよ

 

さらに、成功の秘訣として三点を挙げている。

1) ライブイベントとソーシャル・コンテンツをつなげろ

2) マネタイズにはフレキシブルに対応せよ

3) 国際権利の複雑なマネージメントに備えよ

 

そして白書は、成功のためには、質の高いコンテンツを、どんなデバイスでも、どこにいても見られるように提供し、ユーザー同士、あるいはユーザーと選手をつなげることができるインタラクティヴを構築、活用すること、そしてそのユーザーには、有料課金をしても十分納得がいく多様な展開を準備できることこそが、その最低の条件だとまとめている。

  ※白書の英語全文は以下で読めます。

https://www.comcasttechnologysolutions.com/sites/default/files/2017-12/TV%20FUTURES%20INITIATIVE%20SPORTS%20THE%20NEW%20BATTLE%20GROUND%20FOR%20PREMIUM%20OTT.pdf