去年(2017年)、ワシントンでもっともロビー活動費を使ったのがGoogleで、その額は1800万ドル(約20億円)にのぼり、Facebook、Amazon、Appleを合わせた4社合計では約5000万ドル(約55億円)になることが明らかになった(“Wasington Post”、1月24日付)。
ロビー活動は、団体や企業が政治家や政府機関にはたらきかけ、自分たちの活動に有利な法律や規則を作らせたり、不利な規制を撤廃させる政治活動のことで、米国ではロビーストとして登録すれば、ほぼ自由なロビー活動ができ、ロビーストが法案そのものを作ることも珍しくない。企業各社は、自社や業界に有利になるよう、日々、積極的なロビー活動を繰り広げているのが現状だ。
ロビー活動を行う団体や企業は、政治献金もおこなうため、米国の利益誘導型政治腐敗の元凶とも言われているが、もはやロビー活動なしの米国政治は考えられない。さらにロビーストはシンクタンクを作り、大学や研究機関に献金しながら研究成果をまとめさせ、世論をも操作して、個々の政策決定に強く関与している。
トランプ政権の地球温暖化防止に関するパリ協定脱退や、「アメリカ・ファースト」を掲げた北米自由貿易協定(NAFTA)からの脱退も、選挙公約ではあるものの、エネルギー産業などのロビー活動がかかわった結果であることは間違いない。ちなみにGoogle以下は、通信大手AT&T、航空軍需のボーイング、通信・メディア大手Comcastなどがロビー活動費上位に顔をだしている。
そうした中で、これまであまりロビー活動に熱心ではないと見られていたシリコンバレーのIT産業がロビー活動資金のトップに躍り出た意味は大きい。
4社のロビー活動費と対前年比は以下の通りだ。
Google 1800万ドル(約20億円) +17%(対前年)
Facebook 1100万ドル(約12億円) +32%
Amazon 1300万ドル(約14億円) +16%
Apple 700万ドル(約8億円) +51%
これは「企業献金総額」ではなく、あくまでも「ロビー活動費」だけの額だ。法人税引き下げや、独占政策の変更は、IT産業だけでなく各社に共通した項目だが、IT産業のロビー活動の特徴は、オンライン広告の法制化に関するものや、収集した巨大データの使い方やデータ保護の規制に関するものなど、今後のIT企業の利益に直結する活動だ。
そしてもうひとつ、主な目的は、オンライン上での政治広告、選挙広告の拡大についてのロビー活動だ。4年ごとに大統領選挙、中間選挙があり、そのほかにも各州議会、市議会の選挙がある米国の政治広告は、2010年の改革以降、ほとんど青天井の状態で、ネットワーク各社やローカルテレビ局の主な収入源のひとつとなっている。IT各社は、オリジナル・コンテンツを充実させてテレビ各社との広告市場の争いを進める主戦場での戦いとともに、新たな参入分野であるオンライン上の政治広告の政策を有利に導いて、ここでも広告費収入の拡大を図ろうとしている。