NBC、わずか22日間で1500億円を稼ぎ出す

 

 第52回スーパーボウルは、フィラデルフィア・イーグルスが41対33でニューイングランド・ペイトリオッツを下し、念願の初優勝を果たした。今年はNBCが中継したが、視聴数は1億340万で昨年より7%ダウンした。しかし広告収入は、ゲーム中のCMに試合前後のCMを加えると、今年も5億ドル(約555億円)を超え、30秒スポット料金は500万ドル(約5億5500万円)と、FOXが放送した去年並みとなったようだ。

 試合中には45社の62本におよぶスポットCMが放送された。

NBCは平昌冬季五輪の独占放送権も持っており、こちらは9億ドル(約999億円)を超える広告収入が見込まれることから、スーパーボウルと合わせると、NBCは22日間で14億ドル(約1500億円)以上を稼ぎ出すことになる。

 スーパーボウルと冬季五輪というプラチナ・イベントを抱えれば、これだけ稼ぐもの当然、と思えるかもしれないが、両イベントの開催日が近すぎることと、ナショナル・アドバタイザーが重複することで、NBCは早くから営業戦略を練り、この1年ではアドバタイザーと100回を超えるミーティングを重ねたという。ことにスーパーボウルでは毎年広告のメッセージが大きな社会的関心となることから、スーパーボウルのアドバタイザーを対象に、独自の戦略で臨んだ。

 まずNBCではNBCユニバーサル・マネージメント・ビジネス研究チームとNBCスポーツグループ広告販売グループが合同でマーケティングをおこない、消費者に受け入れられ、ソシアルメディアでも話題となるCM傾向を徹底研究し、You Tube viewやTwitterのユーザーに対しても有効なSuper-Sized AD Modelという基準をまとめた。

 ① Creative Appeal

     動物や子供をスポットに加えるとUSA Today’s Ad Meter(好感度)が上がる。

 ② Google Search

    ワーキング・クラスのテーマや俳優を使った広告はGoogle 検索数を向上させる。

 ③ AD Cut Through

    コメディータッチと新しいパターンは、ニールセン・テレビブランド効果を高める。

 ④ Creative Engagement

    アニメ・キャラクターはYou Tube ビューワー数を増加させる。

 ⑤ Social Buzz

    愛国メッセージはTwitter向けだ。

 さらにこの基準を元に、NBCでは Content Innovation Agency(CIA)というインハウスの制作プロダクションが、CM制作を担当したのだ。CIAは毎年AmazonやDisneyなど、300本以上のスポットCMを制作しており、その経験をスーパーボウルのCM作りに集中したといえる。(ただし、制作したCMの本数は明らかにされていない)

 一方、平昌冬季五輪では、NBCはこれまでの世帯視聴数から、テレビ、デジタル、OHO(out-of-home)を含めたTAD(Total Audience Delivery)へとCM測定方法を変えた。そのギャランティーは公表されていないが、前回ソチ冬季五輪のプライムタイムの平均は2140万視聴だった。

 また、リオデジャネイロ夏季五輪での開会式で、CMが多すぎるという苦情が殺到した経験から、今回の開会式ではCM量を30%削減することに決めた。そして初めて6秒CMも導入する予定だ。

 このように、スーパーボウルと冬季五輪で独自の戦略を練ったため、冬季五輪の広告収入の60%が、五輪広告では新規参入のアドバタイザーからの売り上げだという。そこには、これも五輪広告史上初めての、若い世代向けのデジタルパッケージのみのCMプランや、提携するSnapchat向けの広告なども含まれている。

 これに加えて、NBCUniversal傘下のスペイン語テレビ局Telemundoは、今年開催されるFIFAワールドカップロシア大会のスペイン語放送権を持っており、米国チームが最終予選でまさかの敗退を喫したことから、米国内の広告アドバイザーは、英語放送のFOXよりも、Telemundoに流れると見られていて、NBCのCIAはすでに新たな広告戦略を進めている。