ワールドカップロシア大会が始まった。FIFAの汚職問題などが暗い影を投げたが、FIFAによれば、今大会の収入は61億ドル(約6771億円)と、前回のブラジル大会を13億ドル(約1443億円)も上回ることが明らかになった。これはFIFAの予測から10%上振れしている。
テレビ放送権の収入も予想の30億ドル(約3333億円)を2%上回る見込みで、全収入のほぼ半分をテレビ放送権料が占めることになる。スポンサー契約収入も予測の14億5000万ドル(約1609億円)を超えることは確実だ。
スポンサー契約で突出しているのは中国の企業で、前回大会ではスポンサー枠を取ったのは1社だけだったが、今大会は20のスポンサーのうち、中国企業が7社を占めている。なかでも不動産ディベロッパーの巨大集団ワンダ・グループWanda Groupは目立っている。
2015年にワンダ・グループが傘下に収めたスイスに拠点を置くスポーツマーケティング会社InFornt Mediaは、今回と次回2022年のワールドカップで、アジアの26の国と地域でライツをおさえている。中国代表チームが出場していないにもかかわらず、中国企業がワールドカップ市場を重要視しているのは、なんといっても世界的なサッカー人気の浸透度による。今回のロシア大会は、200を超える国で延べ34億人がゲームを視聴すると試算されている。ワールドカップ開催の招致に積極的な中国は、サッカーを戦略的に重要なターゲットとみなしていることは間違いない。
延べ視聴者の数が多いと予測されるのはラテンアメリカ諸国、次いで中国、アフリカ、アジア太平洋地域、そして欧州、と見られている。
60年ぶりに出場を逃したイタリアでは、ベルルスコーニ氏率いるMediasetが64ゲームを中継するが、当初1億(約111億円)ドルだったイタリアとスペインでの放送権料が、去年11月にイタリアの敗戦が決まり、4700万(約52億円)ドル~5300万ドル(約58億円)の範囲内にディスカウントされた、とベルルスコーニ氏自身が語っている。
アメリカ代表も出場を逃したが、アメリカでは英語の放送権をFOXが、スペイン語での放送権をNBC系のTelemundoがもち、2018年と2022年の大会、それに2015年と2019年の女子ワールドカップも含めて、それぞれ4億2500万ドル(約471億円)、6億ドル(約666億円)を支払っている。4年前、南アフリカ大会の英語放送権をUnivisionが、スペイン語放送権をESPNが契約したときと比べると、英語放送の版権料は30%アップ、スペイン語放送に至っては6倍になっている。これも米国内のスペイン語系人口の増加と、アメリカ代表が出場しようがしまいが、熱狂的なサッカー人気を考えれば、決して高い買い物ではないようだ。