ムンヴェス氏辞任後のCBS、業界再編の台風の眼に

 

 CBSのレスリー・ムンヴェスLeslie Moonves会長兼CEOが9月9日、辞任した。十数人の女性からセクハラで訴えられたことが直接の原因だ。CBSに移る以前の性的関係についても訴えられている。

 ムンヴェス氏は1995年、制作プロダクションからCBSに移り、2006年からCEOを務めてプライムタイムの大改革をおこない、CBSをネットワーク視聴率トップに押し上げた大立者であり、米国のエンターテインメント界で、もっとも影響力のある一人だった。CEO就任以来、ムンヴェス氏が受け取った報酬はストック・エクスチェンジを含めると総額で10億ドル(約1110億円)を超えると言われている(The New York Times, 9月10日付)。

 連日、このニュースは大きく報じられているが、もっとも大きな関心を引いているのは、CBSの今後の行方だ。

 9日にはCBSの取締役の交代も発表された。新たに就任した6人のうち3人は女性で、2人はバークレイズなど投資銀行で大型M&Aを手がけてきた企業買収の専門家、もう1人はIBMなどの経営コンサルタントを務めている。

 男性3人は、全米2位の玩具メーカーHasbroのCEO、ビデオゲームメーカーTake-TwoのCEO、テレビ業界と関係があるのは、2002年から5年間タイムワーナーのCEOを務めたディック・パーソンズDick Parsonsだけだ。この新たな取締役の布陣からも、CBSが今後、若年層向けデジタルコンテンツの充実と、大規模なM&Aを主要な戦略にしていることは間違いない。

 ムンヴェス氏の辞任とともに、今後2年はCBSとViacomの合併について交渉を行わない、との合意も発表されたが、合併に反対していたムンヴェス氏が去ったことで、多くのアナリストは、両社の合併を大前提として今後の方向性を探っている。

 Netflixに対抗して世界市場に打って出るには、CBS/ViacomはAmazon Primeとの提携を探るべきだ、との株主の声は強い。AmazonはすでにSony Corp.とAmazon Prime契約者への優先サービスや映画への共同出資を協議しているが、Disneyと21Century FOXのM&Aに対抗するにはViacomの保有するParamount Picturesと、Sonyの持つColumbia Picturesとのタイアップを予測するアナリストもいる。

 また、Time Warnerを手中に収めた通信大手AT&Tへ対処するために、AT&Tに次ぐ通信大手のVerizonがCBS/Viacomの買収に乗り出すと見る向きは多い。

 ムンヴェス氏が去った後のCBSは、コンテンツ業界再編の台風の眼になりそうだ。