Huluの株式は、現在、Disney、Fox、Comcastがそれぞれ30%を持ちあい、AT&Tが残り10%を保有しているジョイントベンチャーとなっているが、この夏、4社はHuluに計15億ドル(約1665億円)を追加投資することを決めた。
動画配信の雄Netflixと比較してみると、2017年度は、Netflixが60億ドル(約6660億円)を制作費に投下したのに対して、Huluは25億ドル(約2775億円)とその4割にすぎず、今年のエミー賞へのノミネートもNetflixの112に対してHuluは27と、良質なオリジナル作品を作り続けるNetflixに見劣りしている。肝心の米国内契約者数もHuluは今年5月現在で2000万件と、動画ライブ配信を始めたこともあって、この1年半で6割伸ばしたが、Netflixの5800万件には遠く及ばない。
一方、損益を見ると、Comcastの最新四半期決算ではHulu分の損失として1億700万ドル(約118億円)が計上されており、Foxも1億2700万ドル(約140億円)を置いていることから、年間の損失は15億ドル(約1665億円)前後に上ると推定されている(Wall Street Journal, 9月18日付)。今回の追加投資はHuluのAd Techやマーケッティングにも利用されるという。
しかし、最大の問題はHuluの今後の行方が不透明なことだ。
Disneyは21世紀Foxのアセットの一部を710億ドル(約7兆8810億円)で買収し、これに伴ってFoxの持つHuluの30%の株もDisneyが保有することになり、Disneyは60%の最大株主となる。
だが、来年にはDisneyは自社のコンテンツをフルに活かして、子供向けと大人向けの2つの動画配信を始める予定だ。おそらくNetflixの勢いに現状で唯一対抗できるのはDisneyだろうと見られている。しかし、さすがのDisneyもゼロから配信契約者を獲得することには困難が予想される。
そこでDisneyにはHuluに対する3つの選択肢があると言われている。
第一の選択肢は、Huluをフルに利用し、自社のコンテンツを既存のHuluに流し込むことだ。けれどもComcastとAT&Tをいう少数株主を抱えたまま、Huluを独自展開することは難しい。
第二の選択肢はHuluの残りの株をComcast、Time Warnerから買い取って、完全子会社化することだ。しかし、Foxのアセット買収をめぐってDisneyと死闘を繰り広げたComcastが簡単に手を引く保証はない。
そして第三の選択肢としてささやかれているのが、保有することになるHuluの60%の株式を全株売却する、という手法だ。売却先には早くもComcastの名前が取りざたされている。Comcastは独自の動画配信技術をもつ企業を傘下に置いていないため、ノドから手が出るほどHuluが欲しいはずだ、という思惑だ。
これによって、Disneyは90億ドル(約9990億円)から120億ドル(1兆3320億円)を手にすることができる、と市場のアナリストは読んでいる。
いずれも、Netflixという動画配信市場の巨人と対抗するための戦略であり、各社の株価にも大きな影響を与える選択だ。