Netflix、Warner、コンテンツめぐる熾烈なかけひき

 

 ネットフリックスで配信されていて、若者たちの間で人気の、マンハッタンを舞台にしたシチュエーション・コメディ『フレンズ』(Friends)が今年いっぱいで見られなくなる、という情報に、多くのファンはショックを受けたようだ。『フレンズ』は日本でもニューヨークの生の英語を勉強するための教材としても評判だ。

 『フレンズ』はネットフリックスの配信するシチュエーション・コメディでは、『ブルックリン・ナイン‐ナイン』(Brooklyn Nine-Nine)『ビッグバン・セオリー』(The Big Bang Theory)に次ぐ3000万視聴を誇る番組なだけに、その行方が注目された。

 2014年以来ネットフリックスは1シリーズに対して3000万ドル(約33億3000万円)、あるいは1話あたり50万ドル(約5550万円)の配信権料を制作著作権者ワーナー・メディアに支払ってきていた、とされている。

 

The Wall Street Journal, 12月6日

 

 結果としては、ワーナー・メディア(WarnerMedia)が、2019年末までの10シリーズ独占配信権を1億ドル(約111億円)でネットフリックスと契約したことで、ひとまずファンは胸をなでおろした。ワーナー・メディアはこの資金をスタートさせるOTTの整備に充てる予定だ。

 しかし、『フレンズ』はネットフリックス以外にもHuluやAppleから強い引きがあり、ワーナー・メディア自身も、来年後半に豊富なライブラリーをバックにした自前のOTTプラットフォームをスタートさせる予定で、2020年以降の番組の行方にあらためて注目が集まっている。

 OTTがスタートすれば、ワーナー・メディアはこの人気番組を当然自社プラットフォームの目玉にするだろうが、非独占としてネットフリックスにも25%ディスカウントした7500万ドル(約83億円)で引き続き非独占配信権を与えるのではないか、との憶測がもっぱらだ。

 さて、ディズニーやワーナー・メディアがOTTプラットフォームをスタートさせる2019年以降、コンテンツの囲い込みがますます進むことが予想され、すでにディズニーは違約金を払ってでもネットフリックスから自社作品を引き上げる意思を表明している。

 ネットフリックスの動画配信の現状は、図にあるように全作品のうちオリジナルは8%にすぎず、ヴァイアコム、CBS、Sony、BBC、MGM、HBOのコンテンツが13.2%、NBCU、ワーナー・メディア、ディズニー、Foxが19.6%、その他の制作会社が59.2%となっている(2018年10月現在、Ampere Analysisによる)。

 ネットフリックスが年間120億ドル(約1兆3200億円)をかけてでもオリジナルの制作と他社作品の版権獲得にこだわるのも、OTT各社による自社作品の囲い込みが激化した場合の良質のコンテンツの確保を見据えた戦略であることは間違いない。

 良質の強いオリジナル・コンテンツをもつことと、どんなデバイスにでもそのコンテンツを流し込み、コンシューマーがいつどこにいてもそのコンテンツにアクセスできるディストリビューションの手段をもつことが、OTTプラットフォーム戦略にかかせない両輪だ。