デジタル・メディアの今年の注目点

 

 動画配信への動きは今年も拍車がかかることは間違いなく、注目されるのは、Appleがいつどんな形で動画配信マーケットに本格参入するかだ。AppleはAmazon Channels的なサービスを目指しており、すでに、ドラマ専門チャンネルHBOや、Showtimeなどとコンテンツ使用について契約しており、今年の制作費は10億ドル(約1110億円)を超えると見られている。またAppleは去年、『ムーンライト』や『レディ・バード』などの評判の高い映画を次々に送り出しているインディー系の制作会社A24や、チャーリー・ブラウンとスヌーピー、セサミストリートの権利などを獲得しており、子供向けのコンテンツも充実させていく見込みだ。年初の株式市場に見るように、iPhoneの販売に陰りが見えるAppleとしては、今年はさらに動画配信に注力していくことは確実だ。

 ここ数年は超大型のM&Aが続いてきたが、セクハラで実力者ムンヴェスが去ったCBSでは、実権を握ったシャリー・レッドストーンがいよいよ長年目論んできたCBSとViacomのM&Aに動くと見られている。また通信大手Verizonのコンテンツ戦略に強い関心が寄せられるなど、Netflixなどに対抗するための規模と効率を追求するM&Aが今年も予想されている。

 また、2019年前半にはDisney が動画配信サービスDisney+を、そして後半にはAT&Tが買収したWarnerMediaも独自のOTTをスタートする予定で、これまで両社からコンテンツを調達してきたNetflixやAmazonは、ますます良質のオリジナル作品制作を迫られると予想されている。Netflixでは当初80億ドル(約8880億円)とみられてきた2018年度の制作費が100億ドル(約1兆1100億円)を超えたもようで、すでに、NetflixもAmazonも4大ネットワーク系をしのぐ制作費を、独自作品の制作と他社作品の配信権の獲得につぎ込んでいる。

 Disneyは全米映画市場の26%の売り上げを占める総合コンテンツ企業であり、AT&Tは有線、衛星を持つ巨大な通信企業なだけに、DisneyやWarnerMediaが動画配信に参入して以降、その巨大なBig dataをどう活用していくのかが関心の的となっている。巨大メディアがDTCに向かえば向かうほど、視聴するコンシューマーのあらゆるデータがその手に集中していくからだ。