米国では、この1月だけで、メディアで働く2000人が職を失ったと言われるが(recode, 2月25日)、ここ数年、新聞、雑誌、ローカル・テレビでレイオフが続いている。2004年にFacebookがニュース広告収入での売り上げアップに乗り出してから、いわゆる「ジャーナリズム」の就業者数は14%も減っている。
また「ニュースルーム」(いわゆる報道部門)に限定すれば、この10年で23%も人員が減少している。これはデジタル化の波を新聞雑誌がモロにかぶった結果で、ことに地方紙の廃刊やローカル・ジャーナリストの減少は著しい。
こうしたローカル・ジャーナリズムの危機は、ワシントンDCやニューヨークなどの大都市の政治経済に偏りがちなニュースに拍車をかけ、米国の地方で日常的に何が起きているのかを報じる機会が徐々に失われることにつながり、トランプ大統領の誕生を予測できなかった大手メディアの失敗も、そうしたローカルニュース軽視の結果だと言われている。
しかし、recode によれば、従来の「ジャーナリズム」というくくりを超えて、最近は「コンテンツ・ライター」や「ソーシャル・メディア・マネージャー」といったデジタル系の仕事も、分類上「ジャーナリズム」と分類されるようになってきていて、その職業に従事する人々の数は右肩上がりで伸びているという。また病院のニュースレターやNGOのライターなども「ジャーナリズム」に分類されるようになっている。
ボストン大学のクリス・ダリー教授は「新聞やテレビで働くわけではないが、同じスキルをもち、ファクトのチェックやインタビューを発信する人びともジャーナリストだ」と語っている。データ・アナリストやデジタル・マーケティング従事者も職業分類上「ジャーナリスト」とされている。
こうした流れを見ると、分類上の「ジャーナリズム」で働く人の割合は、2004年よりも圧倒的に多くなっており、recode は「ジャーナリズム」の状況は、それほど見込みのないものではない、と結論づけている。
しかし、私見では、こうした分類上の「ジャーナリズム」の名目的な広がりとは全く別に、地道に取材した一次情報を組み立て、地道に検証しながら社会に役立てる「ジャーナリズム」の従事者が減少しているという問題は、やはり米国社会に深刻な傷を残している、と思わざるを得ない。