AT&Tがタイムワーナーの大改革へ

 

 米司法省によって、タイム・ワーナーの買収が最終的に認められることとなった米通信大手AT&Tが、Netflixに対抗するために、いよいよワーナーメディア、そしてCNNを傘下に持つターナー・ブロードキャスティングの大改編に乗り出す。

 CNN Businessは4日、NBC エンターテインメントの会長だったボブ・グリーンブラット(Bob Greenblatt)がワーナーメディアのエンターテインメント部門とDTC部門の会長職に就くと発表した。

 

 これは、これまで別々のセグメントだったHBOとターナーをひとつにまとめ、なおかつ今年末に満を持してスタートさせるOTTプラットフォームと合流することを意味する。

 ワーナーメディアのジョン・スタンキーCEOは、社内に配布したメモで「この統合は、クロスしながら、さまざまなディストリビューションをおこない、われわれのオリジナルコンテンツを、いっそうコーディネートされた形でブランド力を発揮するための機敏さとフレキシビリティを作り出してくれるだろう」と述べている。

 

 ここでタイム・ワーナーの組織をまとめておくと、次のようになる。

  • Turner Broadcasting

o News: CNN, HLN, CNN en Espanol

o Animation: Adult Swim, Cartoon Network, Boomerang 

o Entertainment: truTV (comedy-based reality), TBS (comedy, some sports), TNT (drama, some sports),

 TCM (classic movies)

o Digital: Film Struck (niche SVOD targeted at film fanatics, operated by Turner Broadcasting),

 Super Deluxe (incubator for online media) 

  • Home Box Office (HBO)—HBO, Cinemax 

o Digital channel offerings: HBO Go (TV Everywhere), HBO Now (OTT)

  • Warner Bros.—Warner Bros. Pictures (film production), Warner Bros. Television (TV production), Warner Bros. Animation, Castle Rock Entertainment (film subsidiary), New Line Cinema (film subsidiary), DC Entertainment (comics entertainment development studio), Warner Bros. Digital Networks (DramaFever (K-drama SVOD) 

赤字部分が、今回ひとつの組織になる部分だ。

 

 ターナーのスポーツ部門はワーナーメディア・ニュース&スポーツ会長を兼ねるジェフ・ズッカーCNN社長の傘下でニュース部門とひとつの組織となる。

またワーナーブラザーズのケヴィン・ツジハラ会長兼CEOはターナーの持つカートゥーンネットワークを含めたアニメーション部門と、そのライセンス部門を統括することになる。ワーナーブラザーズのDC Entertainmentとターナーのアニメ部門をひとつにすることで、世界市場を見すえた子供向け番組とビデオゲームの制作・普及を狙う構えだ。

 これは、現在1700億ドル(約18兆7000億円)の負債を抱えるAT&Tとして、最大限の人員整理とコストカットをおこない、事業の効率化を図ると同時に、動画配信のスタートに備えるための大改革だ。AT&Tは2016年にタイム・ワーナーとのM&Aを提唱したとき、「年間で15億ドル(約1650億円)の費用削減が可能であり、10億ドル(約1100億円)の収益シナジーが見込める」と投資家に対して説明した背景がある。

 ディズニーやコムキャストと比べてみると、これまでターナー、HBO、ワーナーブラザーズという三つのセグメントを維持してきたタイム・ワーナーが、組織の集中に遅れていたことは事実で、AT&Tは再編によって、動画配信プラットフォームへ集中的な資本投下をおこなうことができるようになる。

  また、これまでターナーの本拠地だったアトランタを縮小する方向だとの見方も出ている。