売買されるローカル局

 

 ほとんどの地上波ローカル局が系列化されている日本から見ると、米国のローカル局はまったく別の経営形態となっている。ローカル売上合算の上位6社(2015年度)は以下のようになっている。4大ネット以外のNexter、Sinclair、TENGAといったメディア企業名は馴染みがないだろうが、ローカルテレビ局を束ねて経営しているのだ。

 

1位 FOX Television Stations 28社(O&O) 16億4600万$ 

2位 CBS Television Stations 29社(O&O) 15億7000万$

3位 Nexstar Broadcasting Group 171局 14億2100万$

4位 Sinclair Broadcasting Group 169局 14億$

5位 NBCU Owned Television Group 28局 (O&O)12億8900万$

6位    TEGNA  MEDIA 48局 12億7600万$

  

 

 こうしたメディア企業のもつローカル局は4大ネットを含むさまざまなネットワークの提携局(Affiliate)であって、たとえばNexstarの経営するローカル局も、ABC、FOX、NBC、CBSいずれかと提携していることが多い。

 そのNexstarが、保有するローカル局のうち19局を13億2000万ドル(約1450億円)で売却することが決まった。Tengaがそのうち11局を7億4000万ドル(約810億円)で、E.W.Scripps Co.が8局を5億8000万ドル(約640億円)で買い取る予定だ。

 これは、去年12月にNexstarが、同じくローカル局を束ねる有力メディア企業Tribune Mediaを41億ドル(約4510億円)で買収すると発表しており、その資金の一部に充てるとのことだ。また米国の法律では大都市以外ひとつのマーケット地域で複数の局を所有することができないため、NexstarとTribuneで重複する地域の局は手離さなければならない。

 売りに出されたのは、コネチカット州のWTIC (FOX提携局)、テネシー州のWANT(ABCの提携局)、アーカンソー州のKFSM(CBSの提携局)、それにニューヨーク市のWPIXなどだ。

 購入したTengaもScrippsもそれぞれローカル局を持たなかったり、強化したい地域であるため、売買する双方の利害が一致した形だ。

 米国では4大ネットワークだけでなく、こうしたローカル局を束ねるメディア企業同士の間でも苛烈な競争がおこなわれており、NextarはTribuneを買収することで、成長著しいSinclairグループに差をつけたい思惑がある。

 もうひとつ、ローカル局に注目が集まるのは、選挙CMを中心とした政治広告の収入が年々増加しているためだ。去年の中間選挙では全米のテレビCMの合計は34億7500万ドル(約3800億円)となった。これはデジタルの17億ドルのほぼ倍で、選挙のように一度に広く多様な有権者層に呼びかけるにはテレビが最有力なPR方法であることを証明してみせた形だ。

 2020年の大統領選挙を控え、広範な地域を押さえ、激戦が予想される選挙区の視聴率の良いローカル局を手中にすることは、経営戦略上、重要なポイントなのだ。