今年のUpfrontはVideo Streamingに

 

 毎年5月中旬に開かれるUpfrontは各TV局の秋からの新番組の宣伝紹介とCM商戦の場で、ネットワーク各局やケーブルTV各社がニューヨーク市内の高級ホテルや劇場を借り切ってプレゼンが行われる。しかし今年は新型コロナウイルスの影響で、大きな従来の方法が大きく変更を強いられている。

 毎年マンハッタンの中心にあるラジオシティ・ミュージックホールでUpfrontを開いてきたNBCUniversalは5月11日にマーケッター、代理店、テクプロバイダー、メディアを対象とした1時間のビデオ・プレゼンテーション”One Industry Update”を行う予定だ。NBCUはこの席で”One Platform”というデジタルと動画配信、TVの統合的な営業を計画している。

 いつもなら、新番組に出演するスタータレントたちがNBCUの役員と舞台に上り、新番組のVTRを華々しく紹介するが、今年はビデオプレゼンなので派手な演出はない。2020-21年のシーズンの新作のなかで、コロナウイルスの影響で、まだ完成していない作品も少なくない。

 しかし、NBCUでは、このプレゼンをUpfrontとは位置付けておらず、新シーズンのUpfrontは今年後半にあらためて開催する予定だ。

 例年カーネギーホールでUpfrontを開催してきたViacomCBSも5月18日、19日の2日間の予定でバーチャルUpfrontをおこなう予定で、1日目にはViacomのケーブルTVのエンタメ、キッズ、ファミリー向けの新番組中心、2日目にはCBSテレビと動画配信のCBS All Accessの番組と、来年のスーパーボウルなどのスポーツコンテンツを中心としたプレゼンになる。

 

 また、リンカーンセンターを使っていたDisneyも5月26日から6月1日まで、”Virtual Roadshow”と銘打ってクライアントを動画プレゼンに招待している。Disney傘下のメディアグループがそれぞれ1日のプレゼンを受け持つ予定で、去年スタートして順調に有料契約者数を伸ばしている動画配信プラットフォームDisney+も1日を分担する予定だ。招待されるのはDisneyと直接取引のあるクライアント、エージェンシーに限定されている。

 Disneyの特徴は「ボーナス・エピソード」として、細分化された個人層をターゲットにし、データをベースにしたプログラマチックCM向けの1分から3分の短尺コンテンツを次々と披露することだ。

 アナリストによれば、新型コロナウイルスへの対応が順調に進めば、今年は2021年初頭のシーズンを対象にした各局のUpfrontが第4四半期初頭に行わるとみられ、それでも通常よりはるかに縮小した形になることから、通常、1年のプライム帯広告収入の70%近くを売り上げるUpfrontは、30%程度までさがり、むしろ、断片化した広告枠が販売の中心になるため、Video Streamingサービスやターゲット化されたデジタルCMとの総合的な販売戦略が試される年になると見られている。