4月中旬から5月にかけ、トランプ大統領の主張に沿って、「ロックダウンを終わらせ、生活を再開せよ」という“Reopen America”運動のデモが各地を揺さぶった。制限を緩めて一刻も早く経済を再開せよ、という呼びかけがソシアル・メディア・ネットワーク上にあふれたが、Carnegy Mellon Univesity(CMU)の調査によると、”Reopen”に関係するTwitter上のアカウントのおよそ半数がオートマティックにリツイートを繰り返すBotsだった。
CMUでは1月以降、「コロナウイルス」に関わる2億以上のツイートを集め分析している。それによると、トップ50の影響力あるリツイートの82%がBotsで,トップ1000のリツイーターの62%もBotsだった。
Botsとは、ツイッター・アカウントを制御するソフトプログラムで、ツイートとリツイートによる拡散を自動で繰り返す仕組みだ。理論的には1人で数千のアカウントをコントロールすることが可能だという。
Botsはグローバルで、さまざまな国や利益集団によって政治的な目的で使用されることが多い。2016年の米国大統領選挙の際には、ロシアはInternet Research Instituteという民間企業を使って、意図的にヒラリー・クリントン候補を中傷するDisinformation(虚偽情報)をBotsとして拡散させ、選挙の混乱を図り、トランプ候補の当選に一定の役割を果たした、とマラー特別検察官のリポートでも報告されている。
CMUによれば、今回の”Reopen America”も、新型コロナウイルスは5G通信の携帯基地が原因だ、という根拠なき「陰謀論」の拡散とセットになった広がりを見せていたようで、調査責任者は「陰謀論はある集団を分断させる目的で使われる。今回のBotsによる虚偽情報の拡散は、健康や経済に対して現実に不安を抱えている人びとの間に分断を作り出そうとする政治的な意図をもったものだ」と述べている。「5G通信の利用を広げたい世界のエリートたちがウイルスを感染させた」とするこの陰謀論の背後には、「インフルエンザのワクチン注射の時に、コロナウイルスも一緒に注射されている」と主張する反ワクチン運動組織QAnonがあると見られている。
実際、「陰謀論」の拡散はさらに極端な行動を誘発することがある。この”Reopen America”でも、数こそ多くはなかったものの、自動小銃で武装する扇動者もいて、トランプ大統領の”Make America Great Again”を支持する白人至上主義者のデモだった。
こうした新型コロナウイルスに関連する虚偽情報の拡散を重く見たTwitter社も、今年3月18日に新たな対策を発表し、「人を傷つける可能性のある行動を呼びかける新型ウイルス関連の内容は削除する」とし、これまでに2600ツイートを削除した。新型コロナウイルスに関して挑発行動や迷惑行動につながるアカウントは430万見つかっている、という。