注目されるStreamingローカルニュース――CBSNの試み

 

 新型コロナウイルスの感染が全米で拡大し、ローカルTVニュースへの関心が高まっている。4大ネットワークのニュース番組は全国ニュースの比重が大きく、ワシントンの政治、ウォールストリートの経済、そしてワールドニュースを伝える比率が多い。CNN、Fox News、MSNBCなどの24時間ニュース専門ケーブルチャンネルも、大きな事件事故以外ローカルニュースを伝えることはないし、トランプ政権への固定化した報道姿勢に辟易する視聴者を遠ざけてしまっている。ましてやパンデミック時代のいま、全米での感染状況よりも各郡別の感染数、各地域の医療機関の細やかな情報を得るためのローカルTVの役割が見直されているわけだ。

 しかし、ローカルTVを見るにはその局がセットに組み込まれたPayTVに有料で契約するか、あるいは無料で見るためには自分でHDアンテナを立てるしかない。PayTVは高額な契約料からコードカットが増え、自前のアンテナ数はここ数年増加傾向にあるものの、放送なので見たい時間にニュースが見られるものはないため、若い世代には敬遠されてきていた。

 

 こうした中で注目されているのがViacomCBSのローカルOTTニュースサービスの試みCBSNだ。これは2018年12月にニューヨークを皮切りにスタートした無料OTTサービスで、その後CBSは、ロス、ボストン、シカゴなどで展開を広げ、今月にはテキサスのダラスで13番目のDTCサービスを開始した。CBSNのニュースコンテンツは地元の連携ローカル局のニュースやライブで、CBSの全米ニュースや国際ニュースも扱う。

 しかし全米での積極展開でネックとなっているのが、ローカル局がCBSの直営か連携局(Affiliate)に限定されることで、ローカルTV局だけをたばねて経営するSinclairのようなメディア企業は、傘下のローカル局がCBSNに参加することを禁じている。もう一つの問題が、もともとローカルニュースの視聴者は圧倒的に高齢層に偏っており、この視聴者層はアプリとネットをあまり利用しないことだ。stay-at-homeのこの2か月で若年層のローカルTV視聴率はアップしているが、若い世代をつかみきれていない。ただし、ローカルニュースのOTT化はコンシューマーへのアドレッサブル広告の可能性を広げることでもあり、ローカルジャーナリズムと地域の若年層を狙ったビジネスの両面で、大きな可能性を持つと注目されている。