今度はSnapchatがトランプ大統領の投稿を拒否

 

デモ隊に対する軍の投入を示唆するトランプ大統領のツイート、「略奪が始まる時、銃撃も始まる」に対して、Twitter社が「この投稿は暴力を賞賛しており、規則に違反している」との警告ラベルを貼り付けたのは、1週間ほど前のことだったが、今度は若者に人気の投稿サイトSnapchatが6月3日に、「Snapchatは今後、トランプ大統領のキャンペーン動画を投稿としては残すものの、ニュースやストーリーへの転載、拡散をやめる」と発表した。

 Snapchatは若者に人気のショートビデオ投稿プラットフォームで、デイリーユーザーは2億2900万件を超える。トランプ陣営は若い世代にアピールするためSnapchatの投稿に力を入れてきており、わずか8か月で150万のフォロワーを獲得した。

 米国の有権者のうち35%がミレニアル(おおよそ24歳から39歳)とジェネレーションZ(おおよそ23歳まで)世代で、Snapchatはその75%にリーチしているといわれている。この世代は物心ついた時からインターネット環境で育ち、SNSやストリーミング、ゲーム、投稿サイトをテレビよりも身近に感じる世代であり、今回の白人警官による黒人男性ジョージ・フロイドさんの死亡事件に対する抗議活動の中心となっている世代だ。

シピーゲルCEO(29)
シピーゲルCEO(29)

 Snapchatは「われわれの社会に人種差別的暴力や不正はあってはならず、それをあおる主張を増幅するつもりはない。われわれはアメリカに平和、愛、平等を求めるすべての人びととともに立つ」とコメントしている。

 しかし、Snapchatのこうした主張にたいして、トランプ陣営の選挙キャンペーン責任者ブラッド・パースケイル氏は、29歳の創業者エヴァン・シピーゲルCEOを名指しで非難し、「Snapchatは会社の資金を違法に利用してジョー・バイデンを持ち上げトランプ大統領を貶め、2020年の選挙を操作しようとしている。多数のユーザーが大統領のコンテンツを見ているのが気にいらないのだ。保守派の声を聞かず、保守派には投票させないようにしているのだ」と攻撃している。

 エヴァン・シピーゲルCEOは、これまであまり目立った発言をすることもなかったのだが、意を決したように、5月31日、「Dear Team――親愛なるわがチームへ」で始まる2000語に及ぶメモをスタッフに発して、「はっきりさせよう。人種差別と暴力と不正にはグレーゾーンはない」と訴え、父が1991年のロス暴動のきっかけとなったロドニー・キング事件の調査チームの一員だったことや、留学した南アフリカで人種差別と闘う人びとと身近に接したことなど、自分の生い立ちを語ったうえで、企業は平等と正義の実現に貢献すべき役割がある、と訴えている。シピーゲルCEOは、「この国の将来と、そこにおける会社の役割を熟考した」結果、このメモを書いた、と述べている。

 しかし、トランプ陣営の選挙プロモートを制限しようというSnapchatのこの判断については「言論の自由を犯す検閲」だとする批判もあり、トランプ大統領とTwitterに端を発したSNSの役割と権限をめぐる論争はさらに熱を帯びている。

 

※エヴァン・シピーゲルCEOの「2000語メモ」は以下

https://www.snap.com/en-US/news/