民主党の大統領候補指名が確実になったとはいえ、新型コロナウイルスで露出が減り、影が薄かったジョー・バイデン候補が、ようやく本格的なTV広告の展開に乗り出した。
6月19日にOAが始まったTV広告は2種類の60秒スポットで、ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシン、フロリダ、アリゾナ、ノースカロナイナという、2016年の前回選挙ではトランプ大統領が制した諸州でOAされている。これはバイデン陣営としては初めての本格的な大統領選挙CMで、5週間で1500万ドル(約16億5000万円)の予算だ。バイデン候補は5月には8080万ドル(約90億円)を集めていて、各種世論調査ではトランプ大統領をリードするなど有利な情勢も重なるなかで、一挙に攻勢をかける戦略だ。
一方のトランプ陣営はこの春からすでにバイデン候補を攻撃するCMを流していて、2270万ドル(約25億円)を投じている。放映地域も、勝負の行方を決するこの6州と、前回は制したものの今回は激戦が予想されるアイオワ、オハイオを加えた8州だ。
バイデン陣営はこれ以外に、フロリダ州とアリゾナ州でスペイン語話者を対象に100万ドル(約1億1000万円)をかけた選挙CMを打っているほか、インターネットのターゲット・プログラミング広告やラジオでも選挙広告を打っている。
今回のTV広告は、白人警官の暴行によって死亡した黒人男性ジョージ・フロイドさんの追悼集会での演説を中心に置いて、米国民の団結を呼びかけるとともに、名指しこそしないものの、分断を煽るトランプ大統領を強く批判する、オーソドックスな内容だ。
もう一本のCMも、農民やエッセンシャルシャルワーカーの働く映像を中心に据えたもので、ウォールストリートの金持ちではなく中産階級を豊かにして米国を支えていこうと訴える、オーソドックスなつくりだ。
バイデン陣営の狙いは、ラティーノ、黒人有権者をとりこぼすことなく、前回はトランプ候補に流れた中西部の中産階級、労働者階級に強く訴えかけることがわかる選挙CMとなっている。