3D番組に誰がお金を払うのか


 米国ではクリスマス商戦を目前に各テレビ・メーカーが立体映像が楽しめる3Dテレビ販売に全力を挙げている。しかし、3Dで見たい番組が不足していることや専用テレビが高価格なことなどからメーカーの思惑通り消費者の購買意欲を引き出せるかどうか不透明な状況だ。メディア業界誌バラエティーは最新号で、「誰が3Dテレビにお金を払うのか」と題した記事を掲載、消費者とともに制作者の3D番組制作に対する消極姿勢を指摘しながら早期普及に悲観的な見方を示している。


米国では今年1月にラスベガスで開催された米家電見本市「2010インターナショナルCES」など様々な家電ショーで3Dテレビが主役を演じた。世界中で大ヒットとなった3D映像技術を駆使したSF大作映画「アバター」が引き金になった形だが、2010年は「3D元年になる」などともてはやされたほどだ。しかし、いまのところ米放送界には本格的な3Dテレビブームが到来する気配は見当たらないのが実情だ。


消費者からは、「薄型テレビを購入したばかり。そのうえ(高価な)3Dテレビも、というわけにはいかない」などの声が上がっている。一方で、人々が3Dで見たいと思う番組が決定的に不足していることも3Dテレビ人気に火がつかない要因の一つだ。バラエティー誌は、「高額な3D番組制作への取り組みにネットワークテレビが躊躇している」ことを指摘している。これに対し、ネットワークテレビ側は、「HD(高精細度)テレビ放送のために1局あたり1800万㌦の設備投資をしたが見返りがない」(Foxスポーツ社長ディビッド・ヒル氏)、「採算が合わなければ3D番組の制作にはゴーサインが出ない」(CBSスポーツ専務ケン・アガッド氏)などと、当面は3D番組の制作・放送は見合わせる姿勢を明らかにしている。


制作費などを全額支払ってくれるスポンサーが現れない限り地上波テレビでの3D放送は無理、という見方が支配的で、米国における3D放送は当面、ケーブルテレビや衛星放送事業者に委ねられることになりそうだ。しかし、いち早く3D専門チャンネルを立ち上げた人気スポーツ専門局ESPNは今年4月、男子ゴルフ今季メジャー初戦のマスターズを3D放送したが、視聴者はほとんど皆無だった模様で、「同局3D専門チャンネルは、1年以内に閉鎖する」などとするウワサが飛び交っているのが現状だ。