3大ネットの標的は家庭外視聴者


かつて圧倒的なシェアを誇っていた3大ネットワークテレビ(ABC、CBS、NBC)がお茶の間を離れて新たな視聴者獲得に奔放している。ケーブルテレビ局の台頭、インターネットの急速な普及に加え、HDD内蔵型のレコーダーDVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)を使ったCM飛ばし視聴習慣などが定着しつつあり、放送事業の存続をかけたビジネス戦略の一環だ。

米ネットワークは、これまでにも機内向けなど、家庭外視聴者を対象にした番組配信などにあたってきた。しかし、ここにきて、ABCが「ABC New Media Sales」、CBSは「CBS Outernet」、NBCの「NBC Everywhere」など、放送以外の番組配信を担当する部門のテコ入れを始めた。全米に展開する小売店チェーンやガソリンスタンド、さらにはタクシー車内や歯医者の待合室など、新たな視聴者が発掘できそうな場所すべてに番組配信網を構築したいという強い意志が伺える。

内容は、各社、朝の情報番組やプライムタイム番組のハイライト版や看板番組の予告編などが中心。いずれも視聴者がモニター前で過ごす時間が限られていることを念頭に、短編に限定されている。また、CBS Outernetのように、スーパーマーケットでは料理番組といったように、場所に適したオリジナル番組の制作をする社もある。ほとんどの番組にCMが挿入されているが、放送に視聴者を引き寄せることを主眼においたCM無しのプロモーション番組もある。

米有力調査会社「フォレスタ・リサーチ」では、こうした3大ネットワークの戦略もあって、米市民による一日当たりのテレビ番組視聴時間が2008年の平均4時間から2013年には25%増となる5時間に増加すると見ている。ただ、家庭外広告収入は当面、全売上げの2~4%(米調査会社サンフォード・バーンスティン)程度に留まる模様。