ABCがウェブキャストを重視


米ネットワークが放送する夕方のニュースで視聴率トップの座についているABCニュースが、ブロードバンド用番組「ワールド・ニュース・ウェブキャスト」に力を入れている。毎日午後3時(米東部時間)から15分間に渡り生放送されているが、午後5時以降はVOD(ビデオ・オン・ディマンド)の形で視聴することも出来る。

番組では夕方のネットワーク・ニュース番組に先駆けて最新ニュースが伝えられるが、その日のニュースをより深く掘り下げるなど、既存の番組で伝えた内容の焼き直しが中心となっているライバルネットワークのウェブキャスト番組とは一線を画したものになっている。また、「ワールド・ニュース・ウェブキャスト」では同番組向けに独自取材・制作されたニュースが提供されている。最近ウェブキャストされた地球温暖化問題を扱ったグリーンランドでの取材映像は、ネットワーク・ニュースではなく、最初からウェブキャストを念頭に制作されたいい例だ。また、他局のサイトはニュース部門とは独立したデジタル制作部門のスタッフが制作にあたっているが、ABCでは夕方の全国向けニュース「ワールド・ニュース・ウィズ・チャールズ・ギブソン」のスタッフが包括的な制作に当たっているという点でもユニークな存在だ。

同サービスについては、10月13日付のニューヨークタイムズ紙が特集記事を掲載し、「放送時に短く紹介されたインタビューなどがたっぷり聞けたり、アイポッドなど携帯プレイヤーや携帯電話にダウンロードして視聴する若者視聴者を意識した番組作りになっており、夕方ニュースでは実現不可能な内容となっている。立ち上げ後20ヶ月たった今、これまであったウェブ版ニュースとはまったく違ったサービスに生まれ変わった」と好意的な評価を与えている。

ABCウェブキャストのダウンロード数はいまのところ毎月450万件と主要メディアとして認知されるまでには至っていないが、ABCではデジタル・マルチ・メディア時代への対応策の第一歩と捉えている。