ABCが重要2部門を統合

テレビ離れとCM減収に苦しい経営を強いられている米ネットワークテレビだが、ABCが思い切ったリストラ策を決定した。ABCの親会社ウォルトディズニーはこのほど、ABCのプライムタイム編成などにあたる「ABCエンターテイメント」と番組の制作にあたる「ABCスタジオ」の両部門を統合すると発表した。現在ABCエンターテイメントの社長を務めるスティーブ・マクファーソン氏が新組織の社長に就く。

統合の狙いは、組織のスリム化と経費削減。両部門を管轄する「ディズニー・ABC・テレビジョン・グループ」のアン・スイニー社長は記者会見で、「今回の統合は、番組の企画や制作プロセスの簡略化が目的。即人員カットを意味するものではない」と述べた。しかし、社内では、「数百人単位の首切りが発表されるのは時間の問題」との噂で持ちきりだという(ウォールストリート・ジャーナル紙)。業界誌ハリウッド・リポーターは、「両部門のエクゼクティブ・レベルを含む大量の人員削減が決行されることは避けられない状況だ」と伝えている。

米メディア企業の制作部門は他ネットワークの番組も制作するほか、旧規制法のなごりで、分社制がしかれるのが通例。しかし、テレビ業界を囲む厳しい経済環境にリストラを余儀なくされたかたちだ。今回のABCの決定は、NBCユニバーサルが先月発表した、「NBCネットワーク」と「ユニバーサル・メディア・スタジオ」の統合に習う形となった。

米国では4大ネットワーク(ABC、CBS、Fox、NBC)の今シーズン(2008年9月-2009年5月)のプライムタイム(20:00-23:00時)視聴者数が昨年比6%の落ち込みを見せている中、ABCは同9.4%減と一段の苦戦を強いられている。米調査会社バーンスタイン・リサーチのアナリスト、マイケル・ネイサンソン氏は、4大ネットワークの今年の広告収入は昨年比3%の落ち込みを見せると予測している。