CBSがCATVから再送信料徴収へ


米ケーブルテレビ事業者(CATV)と地上波テレビ放送との関係に地殻変動が起こる可能性が出てきた。CBSネットワークや系列局などを傘下に置くCBSコーポレーションの最高経営責任者、レスリー・ムンベス氏がこのほど、CATV9社との間にテレビ番組再送信に代価が支払われる新契約を締結したと発表したからだ。ムンベス氏は、「テレビ市場に新たなパラダイムを示す画期的な合意だ。コンテンツ(番組)の価値を正当に評価するもので、将来の再送信契約にも指針を示すものだ」と成果を強調している。

ムンベス氏によると、新契約を結んだCATVはいずれも小規模な事業者(合計約100万世帯)とIPテレビを展開する電話会社大手ベライゾン。契約内容とCATVの社名などは他に与える影響が大きいとの理由からいっさい公表されていない。しかし、業界筋によればCATV側がCBSに対し、一世帯あたり50㌣(約60円)ほどを支払うことで合意した模様。

金融サービス大手UBSでテレビ業界の分析に当たるアナリスト、ルーカス・バインダー氏によると、今回の合意でCBS側に転がり込む新たな収入はわずか600万㌦(約7億2,000万円)程度。しかし、将来大手CATVとも同様な契約が締結できれば、CBSはいながらにして年間2億4,000万㌦(約288億円)の新収入を手にすることが出来ると予測している。

米国では、CATV側はケーブル専門局に送信料を払うことを代償に、同系列の地上波テレビ局の番組の再送信には一切代価を払わない、というのが慣わし。ローカル局58社を所有するメディア会社「シンクレア・ブロードキャスティング・グループ」が70万世帯規模のCATV社から再送信料を取り立てた例はあるが、ネットワークが再送信料を徴収するのは初めてのケース。ちなみに、CBSとコムキャストなど大手CATVとの契約更改は2009~10年に集中している。