DVR視聴急増もネットワーク番組低迷


9月中旬から始まった米テレビ界の新シーズンで、HDD内臓型録画機「DVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)」視聴数が急増しているが、下降線を辿る視聴率を押し上げるまでには至っていないことが分かった。DVR視聴とは、デジタル録画機を使って番組放送時間にとらわれず、見たい時に見たい番組を視聴すること。若い女性をターゲットにしているネットワーク「CW」では、番組によってはDVR視聴者が全体の視聴者数の半分を占めることが判明している(10月20日号既報)。他ネットワークでも、例えばNBCの人気コメディー番組「オフィス」やFoxのSF(サイエンスフィクション)ミステリー・ドラマ「フリンジ」などのDVR視聴者が全体の30%を占めるほどになっている。

しかし、ニールセン・メディア・リサーチ社の調査では、新シーズン開始後2週間経過した時点で、地上波ネットワーク5社(ABC、CBS、NBC、Fox、CW)の視聴率が昨年同期比6.6%減少していて、DVR効果が相殺されているという。広告主が重要視する視聴者層(18~49歳代)の視聴率は、ABCが15.4%減少など、昨シーズン比軒並み二ケタ台の落ち込みを記録していることも深刻だ。

NBCネットワークなどを傘下に置くNBCユニバーサルのマーケットリサーチ部門担当社長のアラン・ウァーツェル氏は、「テレビ界を囲む環境は細分化が顕著で、その傾向がますます強まっている。ネットワーク視聴者が専門局を中心としたケーブル局へ離反していることが言われて久しいが、その結果がはっきりと出始めている」と状況を分析している。当然、広告収入にも深刻なダメージを与え始めており、プライムタイム(米東部時間20:00-23:00)番組のCM販売、特にスキャターと呼ばれるシーズン開始後のスポットCM販売市場が軟調に推移しているという。ネットワーク関係者の中には、「大統領選挙が終われば、視聴者の関心がプライムタイム番組にもどってくる」(CBS関係者)ことに期待を寄せる向きもある。