iPadでTV番組視聴が可能に


全米第2位のケーブルテレビ(CATV)事業者、タイム・ワーナー・ケーブル(TWC)がこのほどスタートさせた新サービスをめぐり、米テレビ業界が揺れている。TWCが提供する番組再送信、ブロードバンド両サービスに加入すれば、アップル社の人気タブレット型情報端末「iPad (アイパッド)」を使って特定のチャンネル(約30チャンネル)がリアルタイムで視聴できるというのが新サービスだ。さっそくアプリケーションをダウンロードし試してみたが、家庭内無線LAN経由で、キッチンや寝室など、テレビ受像機のないところでテレビが楽しめる非常に便利なサービスだ。高画質で携帯性にすぐれたアイパッドの機能が最大限利用できるサービスの一つではないだろうか。TWCによれば、315日に新サービスが展開されるやいなや、即座に30万人が利用したという。

 

ところが、同サービスにTWCがアイパッドに取り込んだ番組供給サイドの一部が、契約違反だとしてかみついた。番組がブロードバンド経由でアイパッドに流れるため、セキュリティーや著作権の問題に抵触する可能性があるほか、同配信方法が契約違反だ、というのが主張だ。これに対しTWCは、「アイパッド上での視聴は、家庭内に限定されており、2台目3台目のテレビで視聴することと何らの違いもない。現行契約の枠組み内のサービスだ」と抗議をはねつけた。しかし、これらチャンネルのオーナー会社であるバイアコム社やニューズ・コーポレーションが、番組送信停止も辞さないなどと態度を硬化させたため、TWCはこれらのチャンネルを除去し、新たなチャンネルを編成することになった。TWCとバイアコムは係争中だ。

 

CATV業界では、CATVサービスからの離反を防ぐために、「TV Everywhere」(どこでもテレビ)というコンセプトを採用。加入者のみがアクセスできる、スマートフォンや情報端末など使った番組配信サービスを始めている。一方、CATVからの再送信料が重要な収入源となっているケーブル局は、TV Everywhere のさらなる拡大にどのように対処していけばよいか、ジレンマに陥っているというのが現状だ。TWC以外にも、NY近郊にサービスを展開するケーブルビジョンが同様なサービスを始め、番組供給側とのトラブルになっている。 <NY北清>