NC州のデジタル放送で欠陥露呈

米南部ノースカロライナ州の小都市ウィルミントンで9月8日、全米に先駆けて地上波デジタル放送が始まった。当日は目立った混乱もなく、「無難なスタートを切った」(地元テレビ局WWAY-TV)かに見えたが、その後、放送受信難に陥っている世帯があることが明らかになった。米連邦通信委員会(FCC)に、ウィルミントン地区と隣接サービスエリアとの境界付近に住んでいる住民から、「地元テレビ局の一つWECT-TV(NBC系列局)がまったく見られなくなった」との苦情が200件以上寄せられたという。ケビン・マーチンFCC委員長が、このほど連邦下院議会の公聴会に出席した際に明らかにした。米会計検査院(GAO)では、デジタル化による放送エリアの縮小で、地域の約2万3千人が影響を受ける可能性があると、推測している。

マーチン委員長は、「デジタル放送化されることで、アナログ放送で親しんできたテレビ局の放送が見られなくなる世帯が現れることが明らかになった。懸念を抱いている」と述べた。さらに、マーチン委員長は同委員会に対し、「完全デジタル化の暁には、全米のテレビ市場の15%で電波の届く範囲が狭まることになるだろう」との見通しを述べた。米ウォルストリート・ジャーナル紙は、「ウィルミントンで始まったデジタル放送で露呈した予期しなかったトラブルだ」と報じている。

マーチン委員長は、「受信難の地域が取り残されないために、地元のテレビ局と協力して対応していくことが重要だ」としながら、放送局に対し、放送範囲を拡大するための新たな送信アンテナの建設要請なども検討していくことにしている。

米国における完全デジタル化は来年2月17日に設定されていて、約5ヶ月先行して始まったウィルミントンのデジタル放送はモデルケースとして位置づけられている。