NYタイムズ電子版が有料化へ


米国を代表する有力紙「ニューヨーク・タイムズ」(以下、NYT)は20日、 2011年初頭を目標に、現在無料で提供している電子版を有料化する方針を発表した。それによると、同社は、現在無料で公開している電子版について、月間 にアクセスできる記事の数を一定に定め、回数を超えた場合は課金をする。同紙の購読者は、これまで通りサイトに無料でアクセスできる。


英経済紙「ファイナンシャル・タイムズ」(FT)が導入している課金モデルに近いかたちになりそうだが、同社によると、無料でアクセスできる回数や、毎月一定の閲覧回数を上回った場合に徴収する料金の具体的な内容については、現時点では未定としている。


米国では、広告収入の激減や購読者の減少などを背景に、業績不振が続く新聞業界だが、無料で提供されている電子版の人気が上昇を続けるジレンマを抱えてい る。米主要紙のほとんどが電子版を無料で提供しているが、これを有料化し、経営黒字化の糧にしたい考えがある一方で、「有料にすれば利用者が激減する」懸 念もあり、各社は有料化に慎重な構えをとっている。今回、影響力のあるNYTが有料化の方針を明らかにしたことで、他紙が一斉に追随する可能性もある。


しかし、同紙電子版の有料化に、疑問を投げかける声もある。米調査会社「Outsell」のメディア・アナリスト、ケン・ドクター氏は米広告業界誌「アド バタイジング・エイジ」(以下、アド・エイジ)に対し、「FTの課金制度が成功しているのは、同紙が一般読者向けではなく、ビジネスや金融業界で働く読者 に特化されているからではないか」と述べ、同様な課金制度がNYTの読者に受け入れられるかどうか疑問を呈している。


ただ、アド・エイジ誌は、「購読者が離反する動きが加速するようなら、無料でアクセスできる回数を調整することもできる」などとNYTの課金制度が柔軟性を持っていることを指摘している。
米調査会社「コムスコア」によれば、昨年11月のNYT電子版へのユニーク・ビジター数は1960万件にも上った。