NYタイムズ電子版を有料化


米国を代表する有力紙ニューヨーク・タイムズ紙は328日、これまで無料だった電子版の記事閲覧の有料化に踏み切った。今回発表された課金制度によれば、パソコンとスマートフォン(多機能携帯電話)による閲覧は1ヶ月15㌦、パソコンとアイパッドなどタブレット型情報端末による閲覧は同20㌦、パソコンとすべての携帯端末による閲覧は同30㌦と、3種類に分かれている。ただし、最初の1ヶ月間は導入期間として全サービスを99㌣で提供する。

 

ニューヨーク・タイムズ電子版の閲覧者は月間3000万人を超すといわれ、新聞サイトの中で最大級の人気を誇っている。有料化はこれら利用者に多大な影響を及ぼすことが懸念されるが、同社では今後も月間20本の記事までは無料で提供するため、影響は最小限に食い止められるとしている。同社の調べでは、電子版閲覧者の85%が、月間閲覧記事数20以下に留まっていると見ている。

ちなみに、ニューヨーク・タイムズ紙に加え、同紙国際版インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙の購読者(日本国内も含む)は、すべての電子版が無料で閲覧できるほか、検索エンジン最大手グーグルやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)最大手フェイスブックなどを経由すれば一日当たり5本までの記事が無料で閲覧できるという。。

 

ニューヨーク・タイムズ紙のアーサー・シュルツバーガー会長は、課金制度導入発表に際し声明を発表、「有料化は、我社の将来への投資だ。これによって、我々に与えられている新聞の使命を遂行することが出来る」と述べ、“デジタル収入”に大きな期待を寄せている。しかし、「ニュースはネット上で無料で得られるというのが過去15年間に培われた常識。有料化すれば利用者が離反するのは明白」「広告減収を補うほどの収入をサイトの有料化から得られるとは考えがたい」などと有料化には懐疑的な声も多い。

 

米国はもとより世界でも屈指の高級紙であるニューヨーク・タイムズ紙が電子版の有料化に踏み切ったことで、追随する動きが加速するのかどうか、その成り行きが注目される。アメリカ新聞協会(NAA)によれば、2010年における米新聞業界の広告収入は、過去最悪だった09年を6.3%さらに下回る258億㌦。総広告費が同6.5%と増加する(米調査会社キャンター・メディア)なかで新聞業界の不振が際立っている。 <NY北清>