やめられない?再送信サービス


 米国ではテレビ番組のオンライン配信が人気上昇中。動画サイト「Hulu(フールー)」や「YouTube(ユーチューブ)」などを利用したテレビ番組視聴が若者層を中心にすっかり定着した感がある。そんな傾向にテレビ番組の再送信サービスを手がけるケーブルテレビ(CATV)事業者や衛星放送事業者が危機感を募らせている。米テレビ視聴者の9割がこうした再送信サービスを介してテレビ視聴をしているとされているが、加入料(住宅)だけでも年間530億㌦超(09年)(約4兆5050億円)の売上を得るといわれる同事業者にとって、加入者の流出は死活問題にもかかわるからだ。


ところが、米消費者の再送信サービスからの離反傾向は懸念されているほどのものではないことが明らかになった。ニューヨーク・タイムズ紙とCBSネットワークの合同調査によれば、消費者の88%がCATVあるいは衛星放送が提供する再送信サービスに加入していると答え、その中で、「インターネット動画配信が普及したおかげで再送信サービスをキャンセルすることを検討中」と答えた人は15%に留まった。米テレビ界を代表する人気番組「アメリカン・アイドル」(Foxネットワーク)やケーブル局のヒット番組などがインターネット配信を見合わせていることも、利用者を引き止める要因になっているようだ。


ただし、CATV事業者や衛星放送事業者は今回の調査結果に喜んでばかりはいられないようだ。値上げ傾向が続く加入料に不満を覚える消費者が圧倒的に多く、有料チャンネルなどをキャンセルし、出来るだけ料金の安価なパッケージに切り替えるユーザーが後を絶たないのが現状だ。さらに、再送信利用を再考している人が45歳以下の層に集中していて、45歳以上の4倍に上ることが明らかになった。いわば若者利用者のサービス離れだが、そうした傾向にCATVなどが対応策を講じ始めている。その一つが、加入者にスマートフォンやタブレットなど携帯端末で番組をオンデマンドで視聴できるサービスを提供する「TV Everywhere」だ。加入者のみが利用できるサービスを無料提供し、再送信サービスからの離反を防ごうというわけだ。すでに、全米最大のCATVコムキャストや衛星放送大手ディレクTVなど、ほとんどの再送信サービス事業者がTV Everywhereをスタートさせている。