アイチューンズ、新価格制度導入か

米アップル社が運営する音楽・動画配信サービス「アイチューンズ・ストア」では、動画1タイルのダウンロード料金をこれまで一貫して1.99㌦(約209円)に固定してきた。同制度に批判的なメディア企業などはこれに反発し、番組などの提供を拒んできた社が少なくない。業界内には「柔軟な制度を導入し、より多くのコンテンツを提供すれば、ニーズがより高まり、ひいてはアップル社の収益に大きなプラス効果になるはずだ」などと疑問を投げかける声が少なくなかった。

そんなアップルが大きな経営転換に踏み切ったとも受け取れる発表がこのほどあった。テレビ番組「セックス・アンド・ザ・シティー」や「ソプラノス:哀愁のマフィア(邦題)」などで知られる米有料チャンネルの最大手「HBO」と新たなダウンロード価格で番組を提供することになったからだ。このほど提供されることになったのは「ソプラノス」。1タイトル2.99㌦(約314円)に設定されることになった。

アップル側は価格変更について一切説明を拒んでいるが、ある関係者は業界誌「ハリウッド・リポーター」に、「アップル側担当者の対応が1,2年前と比べがらっと変わってきた」と感想を述べている。NBCテレビやSiFiチャンネルなど専門局を傘下に抱えるNBCユニバーサルは1タイトル4.99㌦で販売する案を打診している模様で、近い将来アイチューンズの価格リストが一挙に多様化する可能性が出てきた。

「アップルはHBOとの新価格合意を商業実験として捕らえている。定着させるかどうか決まったわけではない」などとする見方があるほか、「業界内にはダウンロード価格は数年前に放送が終わった番組と新作とで差別化すべきだ」という意見も少なくなく、音楽・動画配信サービスとして圧倒的な人気を誇る「アイチューンズ」をめぐり、しばらくは様々な憶測が飛び交うことになりそうだ。