アップフロント交渉、01年以来最悪に


米ネットワークテレビ新シーズンのプライムタイム(午後8-11時)番組で放送されるCMの前売り交渉、いわゆる「アップフロント」がこのほど終了した。米メディア市場の分析で知られるバンク・オブ・アメリカ・セキュリティーズ-メリルリンチのジェシカ・コーエン氏はウォールストリート・ジャーナル紙に、4大ネットワーク(ABC、CBS、Fox、NBC)の合計売上高は昨シーズン比15~20%減となる約75億㌦(約7275億円)とする推定値を披露した。4大ネットワークにミニネットワークと呼ばれるCWを加えた5ネットワークの売上総額を昨年比22%減となる72億㌦と推定(メディアウィーク誌)する見方もある。いずれにしても、全ネットワークの売上がそろって前年を割り込んだ模様で、2001年以来最悪の取引になった。


今年の交渉は不況を背景に難航し、例年1ヵ月ほどで完了するものが、3ヶ月以上もかかった。CM単価の大幅な値下げ要求を突きつけた広告主に対し、今秋以降の市場回復に期待をかけたネットワークが一定の料金を主張し、譲らなかったためだ。最終的にはネットワーク・サイドがCM販売量を減らすかたちで交渉を終えた。通常のアップフロントでは70~80%のCM枠が販売されるが、今年は65%ほどに留まった模様だ。


CBSネットワークを傘下におく、CBSコーポレーションの社長兼最高経営責任者(CEO)レスリー・ムンベス氏は記者会見で、小売店、通信、ファストフード、さらには薬品業界などの広告支出が拡大傾向にあることを例に挙げ、今年第3四半期以降の広告市場が回復基調に転換するとの見通しを示した。そのため、残りのCM枠については、シーズン直前あるいはシーズン開始後に売りさばくことができるとの自信をアピールした。


しかし、広告主の間からは、「ネットワークがシーズン開始後もCM料金を下げないのなら、インターネットなど他媒体に広告予算を振り向けることもできる」などとけん制する声も上がっており、ネットワークの様子見作戦が当たるかどうか予断を許さない状況だ。