アナログ波の停止延期案が浮上


オバマ米次期大統領の政権移行チームはこのほど、2月17日に予定されている地上波テレビ放送のアナログからデジタルへの移行を先延ばしすることをブッシュ政権と議会に要請した。地デジ用チューナー購入を補助するクーポン・プログラムが、予算枯渇のため暗礁に乗り上げたことを受けたもの。屋外アンテナなどでアナログ放送を受信している、いわゆる直接受信世帯の多くで、まだ準備が整っていないと判断した。同チームは、数ヶ月の猶予を求め、新期日を初夏に想定している模様。

ブッシュ政権や共和党議会は、「完全デジタル化の延期はかえって混乱を招く」などと、政権移行チームの要求に否定的。民主党は、ジェイ・ロックフェラー上院議員が延期のための法案づくりに入るなど、先送り賛成派が多いが、当初は延期に前向きだったエド・マーキー下院議員が、「クーポン・プログラムの手当てが先決ではないか」などと慎重派に転じ、一枚岩ではないようだ。

一方、4大ネットワーク(ABC、CBS、Fox、NBC)は、「デジタル化移行を成功させるためなら、期限変更も支持する」と前向きだが、ローカル局を代表する全米放送事業者協会(NAB)は否定的。全米家電協会(CEA)や全米ケーブル通信協会(NCTA)なども「延期をしてもこれ以上の準備は無理」と、一斉に反対している。

米政府は、デジタル移行後も、アナログ受像機でテレビ視聴を続けたいと考える市民に40㌦のクーポンを発給しているが、商務省傘下の電気通信情報局(NTIA)によると、1月5日をもって予算が底を突き、新たなクーポン・カードの発給が出来なくなった。連邦議会は、NTIAに対し、総額15億㌦(約1,350億円)の予算を割り当て、13億4,000万㌦(約1,206億円)をクーポン発給に、残りの1億6,000万㌦(約144億円)を周知活動に充てていた。ニールセンの調べでは全米テレビ世帯の約7%(昨年12月時点)がデジタル化に対する準備が整っていない模様だ。現時点で、クーポンの発給を待つ世帯が100万軒を越すという推定もある。