クアルコムがフローTVを断念か


米無線通信技術大手クアルコムが同社のモバイル端末向けテレビ配信サービス「FLO TV(フローTV):旧メディアフロー」事業を売却する可能性が出てきた。業界誌「ブロードキャスト・エンジニアリング」によれば、クアルコムの会長兼最高経営責任者(CEO)ポール・ジェイコブス氏が、フローTVの売却あるいは他社との共同運営への移行に強い意欲を示しているという。ジェイコブス会長は、カリフォルニア州サンディエゴで開催された通信関連の会合に出席した際、「フローTVが現在のままのビジネスモデルに留まることはないだろう」と述べ、フローTVを事実上断念する考えを明らかにした。期待したほどの普及が得られないためで、米モバイルテレビの行方にも大きな影響を与えそうだ。


業界内には、フローTVに買い手が現れない場合は、番組配信からデータ通信へのサービス転換を図るのではないか、との見方が出ている。フローTVのビル・ストーン社長も、ブルンバーグ・ニュースとのインタビューで、「フローTVの結果には満足しているとは言いがたい。同技術を、利益が生み出せるサービスに転換することが求められている」と述べている。


フローTVは、現在米国でモバイルテレビ配信サービスを提供している米通信大手、ベライゾン・ワイヤレスとAT&T両者が採用している規格。有料オンデマンド方式でケーブルテレビ番組などを携帯電話を中心とした様々なモバイル端末に配信する数少ないサービスの土台を担っている。

一方、フローTVに対抗する形で、全米800のローカル局が共同組織「オープン・モバイル・ビデオ・コーリション(OMVC)」のもと、地上波デジタル帯域を使った携帯電話向けの番組配信の展開を試みている。しかし、無料、有料どちらのサービスにすべきか、さらには番組のサイマル放送に着手すべきかどうかなど、ビジネスモデルの確立に手間取っているのが現状。サービスの本格的な立ち上げは来年以降にずれ込む可能性が出てきた。