スタジアムがマルチメディアでTVに対抗


 米国で圧倒的な人気を誇るスポーツといえば、米プロフットボール・リーグ(NFL)主催のアメフト・ゲーム。テレビ中継番組も絶好調で、ニールセン社によれば、昨シーズン放送された試合の平均視聴者数は1990年以来最高となる1660万人を記録した。ところがスタジアムの観客数はピークだった2007年に比べ3%減少。このままでは観客をテレビに奪われてしまうと危機感を抱き始めたチームのオーナー会社らが、攻勢に出た。

来シーズンからニューヨークの人気チーム、ジャイアンツとジェッツのホームグラウンドになる「ニュー・メドーランズ・スタジアム」では目下、高画質の映像が見れる大スクリーンの設置やスタジアム内のみで利用が可能な多機能型携帯電話機(スマートフォン)向けアプリケーション提供を含む、マルチメディア・サービスの準備を進めている。「スタジアムに行けば、確かに臨場感はあるし、他のファンとの連帯感も生まれる。しかし、テレビ観戦のほうが、様々なコメンテーターの解説が聞けるし、試合途中で怪我をした選手の最新情報も入ってくる。他の試合の状況も把握できる」などと考えるファンの声を意識したものだ。

同スタジアムでは、通信会社大手「ベライゾン」とコンピューター・ネットワーキング機器開発大手「シスコ」と提携、ワイヤレス接続用のアンテナが500ヶ所に設置しマルチメディア配信網を設置する。スタジアムの席に陣取ったファンがスマートフォンを使って試合のリプレーを楽しんだり、他チームの試合の模様などをチェックすることも可能になるという。スマートフォンを持っていないファンには、スタジアム内に2200台のスクリーンを用意、様々な情報が見られるようにする。

同スタジアムのテクノロジー担当責任者に就任した、元テレビ・プロデューサーのピーター・ブリックマン氏は、ニューヨーク・タイムズ紙に、「新シーズンでは7000~10000人のファンが同マルチメディア・サービスを利用する」との見通しを示している。同スタジアムの入場券は90~700㌦に設定されているが、チケット購入希望者には1000~20000㌦の年会費を徴収している。チームにとって大きな収入源になっているだけに、観客数の確保は重要課題だ。