スパイダーマンがブロードウェー進出へ

景気後退の影響をもろに受け、”冬の時代“を迎えている米ブロードウェー業界に明るいニュースが飛び込んだ。マーベル・エンターテイメントやハロー・エンターテイメント、さらにはソニー・ピクチャーズ・エンターテイメントなどからなる共同プロデューサー・グループがこのほど、映画で空前のヒット作になった「スパイダーマン」をミュージカル化し、来年2月18日、ニューヨークのヒルトン・シアターで開幕すると発表した。音楽は、アイルランド出身の人気ロックバンドU2のボノとジ・エッジが担当。演出にはライオン・キングのジュリー・テイモア氏があたる豪華メンバー。内容の詳細は企業秘密とされているが、映画と同様、舞台でもスパイダーマンが飛び交うシーンがふんだんに登場する模様だ。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、制作予算が推定4000万㌦(約38億円)と、記録破りの超大型ミュージカルとなる。

米国では不況を背景に、消費者の意識が節約志向に変化しており、高価なミュージカルのチケットを買い控えるファンが増えている。観客動員数の極端な落ち込みが、興行収入を圧迫し、舞台運営資金が枯渇、閉幕を余儀なくされた舞台が1月だけで12(ブロードウェーで上演されている演劇も含め)に上る異常事態になるほどだ。昨年暮れ、約1年半の短命で閉幕した「リーガリー・ブロンド」のプロデューサーによれば、同舞台の閉幕直前の状況は、週当たりの運営費が65万㌦に対し、興行収入が55万㌦と赤字経営を余儀なくされていたが、現在のブロードウェーの苦しい台所状況を示す典型的な例だという。そのためブロードウェーでは生き残りをかけ低予算ですむ舞台に切り替えるプロデューサーが続出。このような流れに逆行するような「スパイダーマン」興行の発表に、羨望の眼差しと懐疑的な見方が入り混じっている。