ダウ・ジョーンズに総額50億㌦の買収提案


米メディア・娯楽企業大手「ニューズ・コーポレーション」が米有力経済紙「ウォールストリート・ジャーナル紙」を配下におくダウ・ジョーンズ(DJ)社の買収に乗り出した。DJの議決権の過半数を保有している創業者一族バンクロフト家が、「ニューズ・コーポレーションを率いるルバート・マードック氏の新聞運営スタイルが同社になじまない」などと提案に反対の意向を示していることから、買収は実現しないとの見方がある。しかし、その一方で、業界内には「バンクロフト家も決して一枚岩ではない」との指摘もあり、交渉の行方は不透明だ。

業界内には、「経営難にあえぐ新聞業界にとって救世主が現れたようなものだ、提案を受け入れるべきだ」(メディアウィーク誌)などと、DJ側にとって魅力的な提案であることを強調する意見が目立つ。また、「ニューズ・コーポレーションの意図は同社が立ち上げを予定しているビジネス専門局のバックボーンにすること。ウォールストリート・ジャーナル紙のブランド名が新局に対しお金では買えない信頼性を与えてくれるはず」(広告代理店アーウィン・ペンランド)といったものから、「ウォールストリート・ジャーナルの基盤を使って、ニューズが所有しているニューヨーク・ポスト紙の全国展開や発行費用の節約にもつながる可能性がある」(米調査会社バーンスタイン)などと提案を好意的に評価するのが多い。

ただ、買収総額が約50億㌦(約6,000億円)と、1株当たり60㌦(約7,200円)に相当し、直近のダウ・ジョーンズ株終値に65%上乗せした水準と破格なことから、ニューズ・コーポレーションの株主の中にも、「斜陽メディアの代名詞にもなっている新聞にこれほどの投資をするのはいかがなものか」などとする反対意見がある模様。

こんな中、市場ではビジネス専門局の雄、CNBCテレビを保有するGE(ゼネラルエレクトリック)やライバル紙のニューヨークタイムズやワシントン・ポストなどが買収劇に名乗りを上げるのではないかとの見方もあり、今回のマードック氏の動きで、業界再編に大きな弾みがつく可能性もありそうだ。