テレビCMは15秒版が急増


 米テレビ業界で15秒CMが目立つ存在になってきている。いぜん主流は30秒CMだが、広告予算の節約になるほか、宣伝効果も劣らないなどの調査結果も上がっていることから15秒バージョンを採用する広告主が急増している。米調査会社ニールセンによれば、15秒CMの数は昨年550万件と、5年前に比べ7割増となった。全CM数に占める割合も5年前には29%だったものが昨年は34%にまで上昇している。


ウィスコンシン大学のブランド&マネージメント研究所の専務理事を務めるデボラ・ミッチェル氏は“15秒CM人気”についてAP通信に、「CM飛ばし視聴が可能なHDD内蔵型のデジタル録画機(DVR)の普及。テレビを見ながらパソコンやスマートフォンを使用するマルチタスキング。Hulu(フールー)に代表される番組配信サイトで配信される番組には最低限のCMのみ挿入されることなどから、視聴者がCMに集中する時間が短くなってきている」と説明する。


米メディア調査会社キャンター・メディアの調べでは、CMを途中で見なくなってしまう視聴者の割合は、60秒CM時で6.5%、30秒CMが6%なのに対し、15秒CM の場合は5%と少ない。ミッチェル氏は、「15秒CMの場合は、視聴者が見続けるかどうか迷う暇を与えない」と分析する。


広告主にとっても15秒CMには、同じ広告費で放送の回数を増やすことが出来るなど、様々なメリットがある。大手ビールメーカー、アンヒューザー・ブッシュでは新製品「Select55」の宣伝に15秒CMの多用を決めた。「長いCMよりも、短いCMで何度も繰り返し放送したほうが、消費者にメッセージが伝わりやすい」と判断したためだ。米国はもとより世界最大の広告主である一般消費財メーカー、プロクター&ギャンブル(P&G)は昨年、15秒CMの放送回数を前年比倍増となる29万9000回に増やした。世界最大の小売店チェーン、ウォルマートでも昨年は14万8000回と、2005年の5700回に比べ大幅に増やしている。


CM制作も、これまでの15秒CMは30秒版の短縮バージョンばかりだったが、15秒に最も有効な内容のものを制作する動きも出てきている。