テレビが子供の認識能力アップに一助

「毎日、西部劇やボードビルで溢れかえるテレビは、子供たちを精神的無気力に導く恐れがある。」 1949年、米国でテレビが普及し始めて間もないころ、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された記事だ。そして、1977年には、米大学入学試験教会(CEEB)が十代の若者たちの学力低下傾向にテレビ視聴が関係している可能性が大きいとする調査結果を発表した。それ以来、テレビが子供に与える悪影響が常に槍玉に挙がっている感があるが、米国小児科学会(AAP)などは、現在も子供のテレビ視聴時間を一日2時間以内に制限するよう呼びかけている。

こんな“世間の常識”に真っ向から反論するかのように、「テレビ視聴は子供の認識能力アップにつながる」とした調査結果が発表された。同調査結果を発表したのは米シカゴ大学経営学大学院のエコノミスト、マシュー・ジェンツコフ氏とジェシー・シャピロ氏。両氏は、全米800校、6年生から高校3年生にわたる346,662人の生徒を対象にした調査結果を分析した結果、都市部に住む子供たちの中で、テレビ視聴を制限されなかった子供たちは、制限された子供たちの成績を上回っていることが明らかになったという。

調査ではまた、中南米からの移民家族でスペイン語が母国語、しかも両親が高等教育を受けていない家庭で育った子供たちの間で、テレビ視聴が彼らの学校での成績に好影響を与えていることも分かったという。しかし、なぜテレビ視聴が子供たちの学力向上につながるいのか、因果関係については不明だという。

また、同調査は、インドの市町村に住む女性たちがテレビを通じて外界の生活ぶりなどを学び、男尊女卑など古い習慣を打ち破り自立するようになったことなどを指摘し、テレビが子供ばかりでなく、成人にも好影響を与えていると指摘している。