デジタル放送、1千万世帯が準備不足


米ニールセン・メディア・リサーチ社はこのほど、4月30日の段階で、アナログ放送からデジタル放送への移行に準備が出来ていない米テレビ世帯が、全体の9.4%に相当する約1000万軒に達するとした調査結果を発表した。同調査によると、これらの世帯のほとんどがヒスパニック(スペイン語を話す人)系と黒人系住民で占められているという。同グループへの周知作業や援助などが手遅れになれば政治問題にも発展しかねない情勢だ。

これらの住民の間では朝や深夜番組の視聴率が極めて高く、来年2月以降テレビが見られなくなる状況に陥れば、ネットワークテレビにとっても深刻な問題になる可能性が指摘されている。ニールセンの調査ではプライムタイム(米東部時間午後8~11時)で放送されている番組の17%の視聴者が直接受信世帯であることも明らかになった。ここ数年テレビ離れが指摘されているテレビ局にとってこれ以上貴重な視聴者を失うことは是が非でも避けなければならない状況だ。

また、ケーブルテレビや衛星放送の再送信サービスでテレビ視聴している世帯でも、キッチンや寝室に置かれた2台目、3台目のテレビは直接受信のものが多く、こうしたテレビ台数は全米で1500万台に上るという。

デジタル放送受信の準備が出来ていない世帯を地域別で見ると、ミルウォーキー市(18.3%)、ソルトレイク市(18%)、ポートランド市(17.3%)、ヒューストン市(17%)などとなっている。一方、準備が整っている地域は、コネチカット州のハートフォートやニューヘブンを筆頭にニューヨーク、アトランタなどの順となっている。

米地上波テレビ放送は2009年2月17日に現行のアナログ放送が停波し、完全デジタル化されることになっている。米連邦政府と放送事業者は周知活動に10億㌦(約1050億円)の予算を計上しているほか、政府がデジタル放送受信チューナー購入のためのクーポン券(40㌦相当)を発給している。